甘美なものは(Not the Red Baron)(途中)

甘美なものは
悪臭を放つことがある
頬を弄りたい(まさぐりたい)と思うほどの美しさは
地に堕ちると皮を剥いだときの匂いがする
助けてと叫んでも
私にあなたを引き上げる力はない

肩を守って
この荒れた指先で囲う代わりに

目を瞑って
私がここから立ち去るために

胸に手を当ててみて
握り潰してみたい憎しみは
すぐそこにあって、でも手の届かないものよ

・・・・・・

沈黙も果実だと
我慢も雨粒だと

・・・・・・

自分を食い殺しても良いと思えるほどの
他人へと傾げられる優しさとは

・・・・・・

We cried a lot.
Out loud
With no sound

・・・・・・

苦し紛れに放った言葉が
一瞬だが、弾けるように
小粒の火種をこじらせた

大気圏を突破して

・・・・・・

そんなことを言う闇に
私は戸惑う表情を見せた

・・・・・・

(救助隊の記事)
炎を灯せ
そして燃やし続けろ
決して絶やすな

腕よ泣け
膝よ軋め
つま先よ今こそ飛び立て
高く飛び立つ大鷲になれ

・・・・・・

痛みが激しい時
手で血の流れをなぞることで
熱さがそっと引いていく

・・・・・・

ぼやけた隙間は
手の形になった
奪われたら
奪い返さないと

・・・・・・

なす術もなく身をよじらせていたのは
私自身だったのだろうか

・・・・・・

抱き締めながら
誰か、私を叱ってくれないかしら
眠ることでまぶたの井戸を潤すならば
空気を吸うことで命を打ち鳴らすでしょうから

・・・・・・

いくら殴り倒しても
氷は氷のままだ

・・・・・・

静かにして
すぐに聞こえなくなる
蛾さえ隠せるほどの
仄かな音だから
祈ってしまえば
すぐに吹き飛ばされてしまう

・・・・・・

夕陽は燃やし尽くす
知られずに埃を被った名残を

・・・・・・

静止を
これほど美しいと思うことはない
呼吸さえ
命をわがままに繋ぎ止めようとして喚く
綱の軋みのよう

鮮血が
これほど豊潤に脈打つと思うことはない
己の内で
無数に広がる葉脈の流れを指で辿る
そして私は旅をする

・・・・・・

泣くな
その身体は今湯気を纏っている
誰えも拓かれていない皮膚の未知が
いかに恐るるに足るものかを伝えるために

泣くな
はらはらと呼吸を溢したままで
額を怒りで燃やしたままで

誰にも触れられたことのない肌を隠し

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