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映画「湯道」〜効能:ほっこり、ストレス解消〜

映画「湯道」について(ネタバレなし)


ある銭湯を中心に、風呂文化を礼賛する映画「湯道」を観ました。

いやー、

突き抜けたバカ映画(褒め言葉)ってホント、いいですよね。

風呂をテーマとした上質なバカ映画といえば「テルマエ・ロマエ」がありますが、あちらはローマ人を起用したかなり大掛かりでダレのない上質な作りでした。
一方で「湯道」は映画としての完成度も「まあまあ」なのですが、この映画には全身を湯に沈めて「はぁ〜…( ´∀`)」とため息をつく、あの心地よさがありました。

OPから謎に厳かなスタートをしているあたり、作品の世界観に暴力的に叩き込む手法をよくわかってらっしゃる。山寺宏一の使い方が正しい。
基本的にキャストの使い方が巧い映画で、これだけ変なキャスティングをしてる割に見終わると全て納得がいくのです。

こういう愛すべきバカ映画は、定期的に摂取していきたいものです。

以下より、ネタバレありとなります。

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(作中)世界は風呂で回っている

とにかくこの映画は、日本人の心に眠る風呂愛を強烈に刺激してきます。
観たらそのまま銭湯に行くまでがセットです。

体を整えるためのポカリスエットイオンウォーターまで配っていました。風呂前の水分補給は大事ですからね。

ここで、あらすじを軽く説明します。

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銭湯・まるきん温泉(※銭湯の名前に「温泉」がついていることはよくある)を経営している実家に、家を出て長く帰ってこなかった長男・史朗が戻ってくる。父亡き後の銭湯を潰して新しいマンションを建てる、という計画を心に秘めて。
しかし、銭湯の跡を継いだ弟・悟朗は、家を出ていったうえ父の葬式にも来なかった兄を軽蔑していた。

銭湯でバイトをしているいづみ、薪の材料を運んでくれる代わりにタダ風呂だけをもらっていく風呂仙人、そして常連客たちの悲喜こもごもがこの銭湯で繰り広げられていく。

そんな中、火事が起きて悟朗が怪我を負う事故が起きる。怪我自体は軽かったが、悟朗は心が折れてしまい、銭湯を畳むと言い出してしまう。
それにショックを受けたのはいづみだった…。

なお、この世界では「湯道」という、華道や茶道のような「道」が存在する。
これは途中でまるきん温泉の常連となる横山さんが定年間近に始めた趣味で、湯船に合掌→水分補給→脱衣→掛け湯→湯船につかる、までの一連の所作を洗練させたものだ。手ぬぐいを頭に載せるのも美しく。お湯は縁から溢れてはいけない。
やたら映像が綺麗なのと、師範代と思しき窪田正孝の姿勢正しき入浴姿が美しいのでそこは必見。

なお、この(狭義の)湯道とまるきん温泉の物語、一見全く繋がらないようだが最後にきちんとオチはつくので安心して欲しい。

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改めて書き出すと、湯道って何なんですかね
ともかく、銭湯を舞台にしているだけに脳が芯から温まったようになるから不思議な作品です。

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とにかくみんな脱ぐ(だって風呂だもん)

エンディングのおまけ映像も含めると、登場人物は全員風呂に入ります。

多くのキャストは湯船に入った後だけの映像となっていますが、前述の窪田正孝や兄弟(生田斗真・濱田岳)はきちんと脱いでくれます。
いい体を楽しむ映画とはいえないんですけどね。斗真さん極限まで出していますけれど。

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キャストとギャグの使い方

冒頭に出てくる少年の育った姿がクリス・ハートなのですが、途中の「やたら歌を歌いたがる常連」である天童よしみとは母子、というギミックで、2人の美しいハーモニーを聴かせてくれます。
エンディングテーマが出演者全員での「You Are My Only Sunshine」合唱ですが、この2人のリードのお陰で聴き応えあるものとなっているのが良いです。

また、厚切りジェイソンが本業のネタの文脈で出てくるのも良いですね。

こういったキャストの使い方は非常にハマっている印象でした。

また、笑いどころがしっかり笑えるのも褒めるべきところで、「実は猿でした」な所のいい感じの映像とか、観客の笑い声がはっきり聞こえる程度にウケていましたよ。そういうのやりそうだとは思ってたけど、想像してたのより面白いものをお出しされました。

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話の流れが少し雑

最後に、敢えて微妙だった点を挙げます。

もう上に書いた通りですが、ストーリー運びに若干の難があったように思います。不要なエピソードはないのですが、例えば傷心風呂旅行のシーンなどは「そこに入れる?」といった唐突さを感じました。

特にDJ FLOWは、キャラの濃さの割に一番唐突だったかもしれません。一発ネタ的になっちゃっていたので、ラジオ番組がちょいちょい流されていて欲しかったですね。
その一方で、相撲が多いのは謎かな。

まあそもそも、思考力を止めることで癒やすタイプの映画ですから、多少の変さは悪くないかもしれません。

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