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カンボジア伝統医学? 民間医療? 「チョップ・クチョル」

 カンボジアに行ったときに現地のマッサージ店に連れていかれた。そこでカンボジア式のマッサージだと言われ受けたのが「コ・クチョル」と「チョップ・クチョル」だった。一見鍼灸に似た施術なので気持ちよさそうだと興味津々で受けたものの、地獄を見る羽目になるとは・・・・・・。

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 この医療はカンボジアの伝統医学という人もいるが、わりと歴史は浅いらしい。東南アジアの伝統医学は、インド伝統医学のアーユルヴェーダか、中国伝統医学である中医のいずれかの影響が大なり小なり必ずあるらしいのだが、この医療はベトナム経由でカンボジアに入ってきたとも言われる。そのため、どちらかというと民間医療のようである。

 とはいえ、カンボジアではごく普通のマッサージであり医療なのだとか。ボクはこの施術をタイとの国境の町、ポイペトのマッサージ店で受けている。こんな辺鄙な町にもあるのだから、カンボジア全体で一般的なのでしょう。

 具体的にどんなことをするのか。まず、コ・クチョルはヘラのような器具で肌を擦っていくという施術だ。このヘラは棒の先端にコインのようなものがついている。イメージとしてはピザを転がしながらカットするあの器具に似ている。円盤は硬貨くらいの大きさなのだが。

 もうひとつのチョップ・クチョルはガラス瓶を火で炙り、中の空気を追い出した状態で背中などに密着させる。すると、吸盤のように背中の肌が吸われて、瓶の中に肌が入っていくような。

 これらふたつの医療には共通するものがある。それは、肌を内出血させることだ。その内出血が濃い部分は特に悪いものが出たと判断されるのだとか。たぶん、傷つけることで内出血させ、血行をよくしたり、身体に備わっている治癒力を促進しているのではないか。これによって体温が上がって、病気が治ると信じられているようだ。

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 チョップ・クチョルは背中にすることが一般的なような気がする。コ・クチョルは前面のほか、背中全体に施す。

 ボクは胸の辺りだけにコ・クチョルをしてもらったのだが、これがとにかく痛い。なんというか、肌、あるいは皮下脂肪の細胞を潰すような勢いでやっていく。最初の擦りはくすぐったいような気がしたが、それは手加減していたのか、あくまでも一投目だったので大丈夫だったのか。そのあとはただただ苦行だった。なんでこんな目に遭わなければならないのかというほど痛かった。

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 チョップ・クチョルは小学校の給食で出てきたヨーグルト瓶にサイズ感や形が似ていた。ライターや線香でガラス瓶の中を炙り、真空に近い状態にしたらさっと背中に乗せる。すると、一気に肌が瓶の中に吸い込まれていく。

 これはコ・クチョルよりも痛くなくて余裕だった、しばらくの間は。ところがだんだん瓶で背中が重くなってくるし、肌を瓶と瓶が引っ張り合うので背中が痛くなってくる。これが結構しんどい。

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 全部置き終わると、少しタオルをかけて身体を休め、一気に外していく。すると、背中はこんな状態になっている。瓶の口の大きさの関係で、まずはこれだけ、である。この時点でもすでに内出血しているので、背中がヒリヒリと痛い。

 そして、チョップ・クチョルはこれだけでは終わらない。そもそも、最初の数個までは押して刺激するのとは反対に、吸い込むことでツボを刺激しているのかなと思っていた。しかし、置き方は適当で、考えて並べているわけではない。とにかく、皮下にある血管を傷つけることが目的なような気がしてならない。余った瓶は適当に隙間にくっつけたりしていたし。こんなのが気持ちいわけがないのだ。

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 1回目が終わると、先の画像の隙間部分にさらに瓶を乗せていく。最終的にこの画像のように背中全体を吸い込んだ状態になる。特に赤黒くなっているところが悪いものを吸い出した証拠だというが、果たしてそうなのだろうか。

 人によってはこれで身体がぽかぽかとしてきて、日本で言う風呂に入ったあとのような感じになるという。血行が促進され、体温が上がって自己治癒力だとか免疫力が上がっているのかと思う。

 問題は、結果的にこれは傷であるということだ。つまり、完全にこの痕跡が消えるまでに長い時間がかかる。ボクは半月はかかったと記憶している。あるいはもっとかかったかもしれない。ホテルのプールや海で泳ぎたい人とかはまず向いていないと思った。

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