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テーマ:「室外機って名前、あんまりじゃないか?」

●「こちらは対談の形をとった、単なる日常のメモです…なんで泣いてるんですか?」

○「室外機て。『室外機』ですよ? あんまりじゃないですか。男泣きもしますよそりゃ」

●「室外機への感情移入ですか? まぁまぁ奇病ですね」

○「だいたい家電というのはその用途ごとに名前がついてるわけです。アロマをディフューズするからアロマディフューザー。アルコールをディスペンスするからアルコールディスペンサー」

●「もっと古来から市民権を得てる、洗濯機先輩・冷蔵庫師範代を例に出していいんですよ? なぜ横文字の新米ばかり…分かりづらい」

○「順序としては逆ですが、人間だって同じですよ。『こんな子に育ってほしい』という親の思いを受けて、無限の可能性を未来に託して名前が決められることだってあるわけです」

●「まぁそうですね。多少は画数で調整が入ったりもするわけですが…家電で言う『用途』というか、『こんな風になってね』という気持ちで名前が付けられることは多いですよね」

○「サッカー選手になってほしいから『修斗』、鳥人間コンテストで優勝してほしいから『翼』みたいなね」

●「それどっちもサッカー選手じゃないかな…あと鳥人間コンテストを一生の業として背負わす親ヤバそう」

○「そんな中、室外機ですよ。室外機!室外機!? ええッ!? 位置が名前!? 果たすべき用途を期待されることもなく、よく分かんないけどお前は外に居るから室外機だって、無念が過ぎるでしょ!」

●「うーん…位置が名前になるってことだったら、懐中電灯なんかも同じでは?」

○「全然違う、どころかむしろ真逆ですよ!懐中電灯はちゃんと『電灯』って用途が名前になってますし、『懐中』に所持しておけるという点はまさに懐中電灯特有の利便性ですから、きちんと長所まで名前になってるんですよ。何より、人間に抱かれてる『懐中』と雨風に打たれっぱなしの『室外』って、どんだけ待遇に差があるんですか! 冬場のアリとキリギリスじゃないですか」

●「それだと室外機の自業自得みたいに聞こえますよ」

○「人間で言ったら、お母さんのお腹の中に居たから、お前の名前は『お腹くん』だ!みたいな名付け方してるわけですよ!? 許せない…」

●「桃から産まれた桃太郎って話知ってます? そもそも誰にキレてるんですか」

○「名付け親ですよ。家電へのネグレクトでしょこれは」

●「家電へのネグレクトを議題に上げちゃったら、日本人はコタツに祟り殺されますよ。年の何割収納スペースに放置されてると思ってんですか」

○「話が逸れますが、思うに『日本人の心』とか言って褒めそやされてるのは掘りゴタツのことなんじゃないかと。伝統的な家屋と一体になっているからこその『心』だと思うので…。ジェネリックである家電のコタツだと、せいぜい『日本人の一念発起』くらいじゃないですか」

●「急に趣が無くなったな…学生が企業しちゃうくらいのノリを感じますよ」

○「とにかく家電である以上、室外機にも優しくしてあげてほしいということです。約束ですよ。くれぐれもベランダの室外機の上でサボテンなんか育てないでください」

●「特にこの議論に関心は無いけど、あえて反論しますね。正確には『室外機』って言われてる時点で家電にカウントされないんじゃないですか?家の外にあるわけだし」

○「非正規雇用だからお給料払う義務ありません…ってコト?」

●「ああ、ついに極端な例えしか言わなくなったか。家から出ないでTwitterばかり見てるとたまにこういう人間が完成する」

○「逆に聞くけど、なんでそんなに室外機に冷たくするの?」

●「室外機が冷たくしてるんですよ部屋を。厳密にはあれって、エアコンの一部と考えて良いわけでしょう? 福はうち、鬼は外。矛と盾。要は役割の違いがあるんです。外に存在することで、室外機はエアーコンディショナーの一端としての役割を全うしてるんです。あなたがさっきから言ってる屁理屈は、口と肛門を比べて『肛門を差別するな、汚い役割ばかり与えるな』ってことだ。だったら貴様はケツから飯が食えるのか?」

○「ええ…極端な例えじゃん…」

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