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ウズベキスタン、行ってきたん(7)現金オンリーのヒヴァの店で爆買いしたら、翌日クレカが即導入された件。

ヒヴァーーー!!!!

愛してるぞーーーーーーーー!!!!!

……というわけで、我々は、帰国して半月以上経ったというのに、いまだヒヴァ最高だったね、もう一度行きたいなどと言っておるのであります。

そんなハラダさんは、いまウラジオストクにいるそうですが……(く、狂ってる……)(旅+推しのいるヤツは強い)




そのハラダさんが日光を避けて元メドレセ(神学校)のホテルでまったり昼寝してたころ。

”どく”のステータスから回復したワイは、元気に買い物を続けておりました。


墓に行ったりとか、(世界中どこにいようと墓を見るワイ)

謎の家のあとに行ったりとか。ここ、脇に階段があって天井に登れたので、昔は二階もあったんだと思います。乙嫁にこういう一本柱のおうちが描かれてたなーーとか思い出して、紙の本で全巻持ってるのにヒヴァでKindle一気買いするとか。



屋根のあるところは基本休んだり食事をするところで、かまどと火を使う場所は別。家と家の間に排水路とたき火するのによさそうな地面のくぼみがあったので、共用で火を焚いていたんでしょうね。


こんな砂漠のど真ん中じゃ、燃やす薪も貴重だっただろう。


乙嫁の一巻で職人のじいちゃんが作ってた柱。


ヒヴァのブルーはグリーン味の強い翡翠に似た色。

都市によってモザイクのブルーの色味も違うのが興味深い。



さてさて、ふらりと立ち寄ったある店は、英語が話せるおねえさんがいて、すっかりいろいろ話し込んでしまいました。


私はこちらの暮らしや習慣について話したかったのもあり、まずは店への礼儀としてお買い物が先!

でっかいスザニを探しているんだ、というとスザニ専用の部屋に案内してくれました。



スザニーーーーー!!!!

スザニの山!!!!!!!!!!!!!

おねえさん「唐辛子はこのあたりの魔除けね。あと、たんぽぽは女の子が遠くに嫁いでも幸せでいられるように。ザクロはヒヴァのモチーフよ」

唐辛子が魔除け!!

確かに、そのあと、ハラダさんと合流して行った、ヒヴァいちおいしい(とトリが教えてくれた)レストランでも、唐辛子がつるされていたよ!

ちなみにここのコーヒーはちゃんとエスプレッソから作るカプチーノだった。おいしい!救い!!(屋台で売ってる珈琲はネスカフェだよ)


スザニ部屋には、歴史あるものから新作まで素敵な柄はたくさんあったんだけど、一目で気に入ったこの柄。

巨大。テーブルクロスよりでかい。

おねえさん「それは女の子が二人がかりで、二ヶ月かけて縫ったの。若いけど上手な二人よ。その二人のはうちの店でもよく売れる」

ここのスザニは、近くに工場があって、この部屋にあるものはすべてそこで手縫いで作られているそう。

女の子が二人で二月かけて縫ったといわれては値切るのもなんだか申し訳ない気がして、でも多少は値切った(大阪人だから)。ひどい値切りをせずドルでお買いあげ。

気持ちしかディスカウント交渉しなかった証拠に、おねえさんが皿をプレゼントしてくれた。

「これはうちの工場で出たB級品だけど、よかったらおまけするね」

と、ヒヴァ柄の大きな皿をつけてくれました。(これはヒヴァにかぎらず値切らないと付けてくれることが多いそうです)

帰国して早速もりつけてみた例など。



買い物が終わったら、ほかにお客さんもいなかったので、ちょいと世間話。

私「毎日忙しいね。英語できるから観光客がいっぱいくるし」

おねえさん「そう。基本私が一人で店を見てるの。上の娘がいま10歳。下の男の子が4歳。だからたくさん働かなきゃ」

そう言って、スマホでかわいい子供たちの写真を見せてくれました。ついつい、うちの息子氏の写真も見せたりして。

おねえさん「私は17で結婚して子供を産んだからたいへんだったの。いろいろと」

私「そうなの?でもこのへんの人はそれくらいで結婚するのでは?」

おねえさん「そんなことないよ!!!だいたい27とか、みんなそのへんよ。私は特別若かったから苦労した」

私「学校に行けなかったとか?」

おねえさん「うーあー、つまり、私も若いってことは、婚家も”まだ”家族がひとそろい(って言ったw)してるから」

私「!?!?お姑さんの、さらにお姑さんの家族と同居なんだ!!」

おねえさん「そう!そうなの!!わかる???」

私「それは辛い!!!わかりみが強い!」

どこの世界も婚家との同居に悩む嫁はいるし、話もはずむ。

私「いやー、こういうこと通りすがりの私が言うのもなんだけど、VISA解禁でこれから日本人がわんさかやってくるから、絶対クレカ導入したほうがいいよ」

おねえさん「クレカは導入してるのよ。だけど、機械が壊れて……。ううん、壊れたっていうか、銀行のほうがまだクレカに対応しきれてなくて」

私「銀行のシステムの問題??」

おねえさん「というか、ネットの問題なの」

と、見せてくれたのは、店の端っこで埃をかぶっていたクレカの機械。実際何度かチャレンジしたんだけど、エラーが出て終了。

私「たいていの観光客はここに来る前にサマルカンドやブハラでスムを使い果たしてしまうし、ドルが尽きたら銀行で両替もできない。ヒヴァはタシケントから遠くて(ほぼトルクメニスタンの国境です)旅程では最後になってる。だけどモノは安い。だからクレカさえ使えれば、わりと高価なものもバンバン売れると思うよ」

真面目な顔をして聞いてくれるおねえさん。

おねえさん「私もそう思う。あーん、クレジットカード導入したいーー!」

でもできないのは、基本ヒヴァの街が城壁に囲まれていて、さらに言うと新市街から距離があるから。

ホテルでも、みんな部屋の中ではwifiも4Gも使えず、遅くまで中庭でスマホをいじってた。ちょっとでも壁や屋根があるとそのwifiですらすぐ切れる。おねえさんの店は古い時代からある商店をそのまま使っているため壁が多くて、電波が届きにくそうだった。

メドレセホテルの中庭。中庭のこのバラは、一日一回ホテルのスタッフさんがここが池になるくらい水を大量に入れているが、あっという間に干上がる……



おねえさん「この店は、2号店で、本店は郊外にあるの。工場からここに運んで売ってる。うちの家はずっと昔からここで店をやってたの」

お客さんが来るたび、にこにこしながら英語で対応するおねえさん。くるくるとよく動き、よく話す。17歳で結婚して子供を産んだなら、学校はどうしたんだろう。でも彼女の英語はとても聞き取りやすく、流ちょうだった。

お舅さんとお姑さんは基本、店の中でお茶を飲んで座っているだけ。でもここではそれが普通なんだと思う。もうあの歳になったらリタイア。そういえば、サマルカンドの宿でも基本オーナーの息子がバリバリ動いていて、親父さんはずっとだらだらしていたなあ……

まあ、それでも、昨日の金物工房のおじいさんのように、職人さんは歳関係なく働く人もいて、みんなそれぞれ。

どうもありがとう、今度は友人を連れてくるねとあいさつして店を出た。

ホテルの中はこんなかんじ。奥がバスルーム。当時の神学生は一人で使っていたというから、超絶VIP待遇です!!


ホテルに戻り、水分補給をしてひとやすみ。皿が重い。

買ったスザニを自慢して昼間にあったことをいろいろ話すと、HPが復活したハラダさんが「私も行く」と言い出したので、日が落ちかけた時間に再び外出。

ハラダ「ぜーったいにあの模様の、金縁の、ポットと食器のセットが欲しいのよーー!」

そのために緩衝材まで日本から持参したらしい。思いがつよい。


そういうわけで、我々はそろっておねえさんの店へ。笑って大歓迎してくれるおねえさんと、お姉さんの妹。ひとりキャラが増えてた。

おねえさんちの素敵な民族衣装。


日本人の一人旅らしき男性の先客がいて、シルク絨毯を見ている。ビンテージ総シルクの薄手のラグはとてもすてきで、私達も便乗して色々見せてもらう。


店内をいろいろと物色するハラダさんだったが、おめあての柄の食器には巡り会えず。勝手知ったる感じで店内を案内するワイ。

ワイ「ここのスザニはこれくらいの値段やで。雑感ではあるが安いと思う」

ハラダ「なるほ」

日本で買うと35000円のスザニが12000円くらいで買える感じ。

せっかくだからクッションカバーでも買って帰ろうかな、というハラダさんだったが、あいにくここでも気に入る柄が見つからなかった。

ハラダ「1色の糸で刺繍してあるのがいいんだよねー」

というと、おねえさん、なにをするかと思えば、いきなり我々の前にスザニの布の山を出してきた。

「この中から好きなのを選んで!!」

ワイら「えっでもこれ、刺繍はしてあるけど布やん!?!?!布やん????」

「大丈夫!!!ちょっと行って縫ってくるから」

で、出たー。必殺「小一時間で縫ってやる」。

ワイ「20分で縫えるって言ってるけど」

ハラダ「mjd?????」

というわけで、ハラダさんもクッションカバーを二枚お買い上げ。

平たい顔の二人が謎のリラックス感を醸し出しながら店でまったりしている間も、おねえさんはくるくるとよく働く。

ほんとうに15分ぐらいでクッションカバーが完成した。


ところがここで問題が勃発。ウズベキスタンはクレカが基本使えないので、すべてがスムかドル払いになる。だから我々もドルをだいぶ持って行ったのだが、なんだかんだと使ってしまっていた。

ハラダ「うーん。スムがもうないから、ドルで払うしかないけど、ドルも思ったよりないなー。飯代のことを考えると、もうあまり買い物できんかもしれん」

ワイ「そうかー、ホテル代も現金払いだしなあ。基本あと3回飯を食わねばならんし」

ハラダ「そうなのだ」

ワイ「残念だなあ」

ってなことを、ところどころおねえさんにも通訳したりして。でも、むこうも商売人。我々が日本語で話していることもニュアンスで伝わったのだろう。

「あの壊れたクレカ機が使えたらねえ」

 なんて話していたのだったが、


が!!!!!!!!!!!

マドラサ(昔の神学校の意味)ミルザボシ

いまはカーペットワークショップ。




次の日、ふと店の前を通りかかったとき、おねえさんが我々を見て満面の笑みで飛び出してきた。

おねえさん「見て!!うちの父が昨日マスターカードの機械を買ってきたの!!!!」

ワイら「mjd????!!!!!」

突然、クレカが導入されていた。

ワイら「壊れてたんじゃないの!?」


おねえさん「見て!!新しいマスターカードマシン!!」


なんと、機械そのものが新調されていた。


お姉さんの妹「イエーーーイ!!!」


突然の村の賑わい。いや、一族の賑わいに、なにがなんだかわからないけどいっしょになって騒ぐ平たい顔の我々。

ワイ「ヤッター――?????――おめでとーーー!????!」

ハラダ「マスターカード!!」

全員「マスターカード!!!」


おそらくヒヴァの街で代々商店をいとなんできたのであろうその店に、マスターカードが再導入される場面に居あわせてしまった。

おねえさん「あれから、父が街まで行って買ってきたの。新しい機械だったら電波も届くと思って。いままさにセットアップしているところ!!父!早く!!父!!はやくはやく」

ものすごい勢いで急かされる父。応援する我々。がんばって父。

「ちょっとまってね。いま父がsimカードを入れたらセットアップ終わるから!!父!できた?!はよ!!!」

我々には、「カモが逃げないうちにセットアップしろ」と聞こえた。いや、だが正しい我々はまぎれもなくカモだ。

なぜなら、突然文明の利器が使えることになった我々は、この瞬間から完全に(金銭感覚が)狂ってしまったからである。

ワイら「カード……が……、使える……だと……?」

「ここで買い物をしなければ何しにウズベキスタンまでやって来たん???」

我々の(というか主にハラダさんの)爆買いが始まった。



ヒヴァに、カードが使える店があるという。

ならば、買わねばならぬ。

欲しいのならば!!!

買え!!!

さもなくば、おまえはいったいなんのために働いているのだ!!!


「じ、実は、ずっと探している柄があるんですが……」

ハラダさんが欲しい欲しいといっていた、ウズベク模様に金縁の茶器と皿のセット。

柄を身振り手振りで伝えると、おねえさん、奥の部屋から自分たちが使っている茶碗をもってきた。

おねえさん「もしかして、これ?」

金縁に紺色の、ウズベクではどこの店でも見たこの模様。


ワイら「そう、それです!!!!!!!!」

おねえさん「えーー、これってウズベキスタンのふつうの家で使う普通の柄だから、店に出してないのよ」

ハラダ「でもそれが好き!!それが欲しいんです!!それがいいんです!!!!」

すると、おねえさん、

「ちょっと待って。電話して工場から持ってきてもらうから」

何度聞いても、アウトサイドのファクトリーからブリングするって聞こえる。

ワイら「mjd???」

おねえさん「郊外の本店にあるかどうかわからないっていうから、いま工場から在庫ごともってきてもらう手配した。30分ほど待って」

ワイら「mjd??????????????」


……持ってきてくれるというからには待つしかない、


そうこうしているうちに、郊外の工場から段ボール箱が届いた。

ワイら「マジで来たーーー!!!」

箱の中にぎっしり詰まった、おなじみの皿とかポットとか一式。すごい量だった。原田さんは「スーツケースに入らなかったら抱いて飛ぶ!!」と言っていたくらい大量だったが、お値段は8000円くらいであった(安)

ハラダさんが段ボール箱の中身を掘ってセレクトした茶器皿セット。



父があれから家族会議の末に街にひとっぱしり行って買ってきたらしいマスターカードマシンは、最新のsimカード式だった。

「電波電波電波~♥♥♥♥」

電波が切れないように機械ごと外へ出て機械を空にかかげながら決済を待つおねえさん。つよい。


ワイ「いやー、おさわがせしました」

おねえさん「何度もありがとう。またね」

おねえさん2「もしかして三度目があるかもね」

なんて挨拶をして。



我々は満足して宿に戻り――はしなかった。

完全に物欲に火がついていた。

物欲をもてあまし、ヒヴァの街を、よみがえったゾンビのようにふらつく我々。

日が落ちかけたヒヴァは完全にアサシンクリードと一致。



メドレセの部屋で、ハラダさんが静かに決意を秘めた面持ちで言った。

ハラダ「……マスターカードが導入されてしまったようだな」

ワイ「……うむ」

なぜかウズベキスタンで謎の勢力を誇るマスターカード。マスター使える店、たしかにサマルカンドでもちょこちょこ見かけました、が。

ヒヴァで使えるとは思っていなかった。



ハラダ「ワイはシルクの絨毯を買う。まどちゃん手伝って」

ワイ「mjd????」


まさか、……あのくそ高いシルク絨毯を買うだと?

だがしかし、日本ではとても手を出せないお値段、ここならば買える……買えてしまう……


ハラダ「マスターカード使えるんでしょ? だったら買う」


そのとき、ハラダは、まどが見たこともないほどすがすがしい顔をしていた。

ハラダ「買うわ」

ワイ「……せやな。クレカ使えるなら買うわな」

ハラダ「スムスムはもうないが、クレカならある」

ワイ「わかる」

ハラダ「サバちゃんは絨毯がほしい!!!!」

ワイ「買うがいい!!!!」

我々の爆買い期間にマスターカードが導入された。これは神の思し召しとしか思えない。アッラーあんがと。


ちなみに、もう一店舗だけクレカが使える店がありました。

ヒヴァでもう一件かろうじてクレカが使える店。息子さんが銀細工の職人さんで、すてきなおかあさんが接客してくれる。

完全に物欲に火がついたワイは、ここでもキャメルのストールを購入。


 

かわいいざくろ柄のおわん。欲しい。そう、ずっとお前が欲しかったのよ……



欲しい。まだ欲しい……

まだまだ欲しい!!!



そして買った。かわいいキャメルウールのピンクのぞうさんストール。ティファニーブルーの方は母へのおみやげに。


肝心なのは、総シルクの絨毯だ。価格もぐっとあがるし、細かいディスカウント交渉をしなければいけないことはわかりきっていたが、ハラダさんがあのシルクのビンテージ絨毯を買うというからには、ここで応援しなくてはいつも心に凸の心を。作家の名がすたる。

「行くか。3度目。ミルザボシの店へ!!!」

「そう、我々はカモ!!!!」


100パーセントシルク絨毯をゲットするために、我々は、次の日またもや、おねえさんの店へ出かけたのであった(続く)



ちなみに、購入したスザニは家でおせんたく。

赤の刺繍糸が特に色落ちするので気をつけて。

クエン酸たっぷりのお湯でざぶざぶ洗って色止め。酢でもOKみたいです。



うちの本棚にかけられた巨大スザニ。


これ、二人で刺繍したっていうのがよくわかる。完全に左右対称になってないんです。

どこが違うでしょうか(笑)

こういうのも、いろんな想像力を刺激して楽しい。手作業品ならではの味わいです。




ひーーー、ヒヴァ編が終わらない~























いつもは本や映像や舞台にするための物語をつくっています。 ここでは、もう少し肩の力をぬいて、本などの形に仕上げることを考えず、気楽になにかを発表していきたいと思います。 ぶっちゃけサポートほんとうにほんとうにうれしいです。ありがとうございます。お返事しています。