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仕事が途切れないマーケティングライターの制作術#014【言葉で絵を描く】

映画のファーストシーンをイメージ

一粒また一粒、落ちた雨がアスファルトに黒い染みを描く。風は北から南へ。ガサガサ、チャキッ、バサ。傘を広げる音が、前後左右から聞こえてきた。高橋は黒い雲が油絵のように塗り重ねられた空を仰ぎ、目を閉じた。

どうですか?何となく情景が浮かんできませんか?私はこういう表現方法を「言葉で絵を描く」と言っています。この手法を使うのは、ほぼ100%冒頭部分です。これから読んでいただく文章の世界に、1秒でも早く読者を引き摺り込み、その世界観で最後まで一気に読ませたい、そんなときに使います。

イメージは、映画の冒頭部分です。映画って、最初に舞台となる場所の情景描写や時代、物語の雰囲気を象徴するシーンから始まり、その後に主人公が出てくることが多いと思いませんか?あれも狙いは同じだと思うんですよ。冗長な説明をすっ飛ばして、観客をこれから始まる物語の世界観に引き込む、その常套手段なんです。

時代はいつ、場所はどこ、季節はいつ、主人公は誰、とナレーションで説明もできますが、そうすると観客(視聴者)の脳みそを使わせてしまうので、咀嚼に時間がかかり物語へ入るのに少し時間がかかってしまいます。だから、視覚、聴覚、嗅覚、触覚など感覚器に訴えて、一気に世界観を理解させようと考えているわけです。

ズームイン/ズームアウトを使って書く

そもそも文章って「堅苦しさ」とか「小難しさ」とか「とっつきにくさ」とか、そういうイメージがつきまとっている気がするんですよね。そのイメージをぶっこわして、読者の気持ちをつかむには、まず、感覚に訴え、イメージを描いてもらうことが大切だと思うのです。その方法として、私は言葉で文章を描く表現方法を使います。

作り方は、シーンを脳裏に描き、そこにあるもの(空、風、人、物、色、音)を言葉にしていく感じです。一番オーソドックスなやり方は、ズームイン/ズームアウトです。例えば、冒頭の文章はアスファルトに落ちた雨粒をクローズアップしたシーンから、徐々にカメラが遠ざかり全体の風景を見せていくズームアウトの手法で書いています。逆に、空のような大きな風景から、どんどん主人公に近づいて書くのがズームインです。

気をつけたいのは、一言でいわないことと、ステレオタイプにならないことです。例えば「雨が降ってきた」、わかりやすいけど、まったくイメージがわきませんよね。あとは「青い空、緑の木々」、わかるけどあまりにもステレオタイプで逆にイメージがわきません。

なるべく具体的かつ詳細に、比喩などを使いながら書くと、イメージを伝えやすくなります。それから、音とか、空気感、時間の経過を盛り込むと、絵が充実します。例えば、空気感だと「身体を押しつぶされるほど濃密な空気が満ちていた」とか、時間の経過だと「気がつくとコーヒーが冷たくなっていた」とか、そんな感じです。

現場へ足を運ぶことが良い絵を書くポイント

マーケティングライターの仕事って「わかりやすさ」重視なので、解説的な文章が多いんですよね。だから、絵で表現する機会は少ないです。だから、ときどき、こういう表現方法を使うと、クライアントからめちゃめちゃ褒められたりします。そうやって仕事を増やしてきた面はあると思います。

そういう戦略的な話は後付けで、単純に自分がこういう文章を書くのが好きだし、楽しいから書いているだけなんですけどね。

ただ、状況をイメージできないと、この手法は使えません。我々マーケティングライターが書くのは小説ではなく事実基づく記事なので、想像だけで書くと「全然イメージが違う」とNGを出されることがあります。私は、ある建築家のインタビューをーしたとき、その物件のイメージをどうしても書きたくて、わざわざ軽井沢まで車を飛ばして見に行ったことがあります。そこで現実の坂の傾斜や道の細さ、空気の冷たさを感じて、文章にしました。その文章も評判がよかったですね。やっぱり現場に行くことって、すごく大事なんです。コロナで現地取材ができないことが増えていますが、やっぱり現場の空気を吸って書く方が絶対良いものができると思っています。

今回は、ここまでにします。

よろしくお願いします。







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