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釣りコラム】クランクベイトのローリングアクションとウォブリングアクションの一考察〜ロール・ヨー・ピッチを理解する〜

クランクベイトはリップ形状やボディ形状、アイの位置などの要素が絡まり合ってアクションが決まります。クランクベイトを作っていると、もう少しこんなふうに動かしたいなと、設定を変えていくことが多いと思います。この記事では私がクランクベイトを設計するときに基準としているアクション設定の方法論を紹介します。

・クランクの動きの3要素

・クランクの制御の仕方(ボディ編・リップ編)

・クランクを見ただけで設計意図までわかる?

クランクベイトの動きの3要素

前後、左右、上下が決まった物体の運動は、ローリング、ヨーイング、ピッチングの3種類が存在します。クランクベイトのアクションではヨーイングはウォブリングと呼ばれ、これにローリングを加えた2種類が特に着目されています。アクションの質をある程度コントロールするには、上記の3種類の制御の方法を知ることが大切です。

ローリング

ロール:x軸(前後軸)周りに回転する動き

ローリングアクションは、クランクベイトが軸周りに回転運動する動きです。背中と側面が交互に現れては消えるため、明滅効果を狙ったカラーリングのクランクベイトには特に有効なアクションです。

ウォブリング(ヨーイング)

ウォブリング(ヨーイング):z軸(上下軸)周りに回転する動き

ウォブリング(ヨーイング)アクションはクランクベイトの軸自体が支点を軸にしてぶれるようなアクションです。引き抵抗が強く、「バタバタした動き」と称されます。ウォブリングアクションは航空・船舶用語ではヨーイング( Yawing)と呼ばれます。ヨーイングは偏揺とも呼ばれ、アクションの破綻はウォブリングに起因することが多いです。

ピッチング

ピッチング:y軸(左右軸)周りに回転する動き

ピッチングは左右を軸として上下に回転するアクションです。これは潜行角度や、障害物にコンタクトした際につんのめったりするような挙動に関係します。通常はリップによってかなり抑制されています。

タイト〇〇・ワイド〇〇とは?

動きの質として、よくタイト〇〇・ワイド〇〇といった言い方をする場合もあります。これはロール・ヨー・ピッチの回転角が小さいことを表しており、いずれも、どれくらいこの3要素を混ぜるか?ということで決まってきます。一方でこの回転角に関しては慣性モーメントが大きく関わっており、素材によってもアクションの質が変わってきますが、このことについては以下の記事で触れています。

ロール・ヨー・ピッチは形状でアクションを制御するもので、ハイピッチ・ローピッチアクションはボディの素材そのものでコントロールするという発想です。

アクションを制御する方法(ボディ編)

アクションは上記の通り、3つの軸の動きが複合的に絡まっています。ここではそれぞれのアクションの制御方法についてボディ形状の観点から説明します。ここではリップ形状に関しては無視します。

ローリングの制御

例えば、F1カーは重心をできるだけ低くしてローリングを抑えています。クランクベイトも同じで、低いところにウェイトを設定すればロールによって倒れ込む動きが抑制でき、ウォブリング優勢となります。ルアーのせいを低くしてシャッドっぽい形状に近づくと、重心が高くなるので、ロールよりの弱い動きになります。

他には、xy平面上に面を作るように回転軸に対して抵抗する形状にします。例えば、ボディを上下に扁平形状に近づける、あるいはフィンスタビライザーのように胸ビレをつけるとロールが抑えられます。

ウォブリング(ヨーイング)の制御

ウォブリングの制御には、フラットサイドクランクが良い例です。ボディ自体がラダーのように水を受ける形状となっていることで、回転角を小さくすることができ、細かいアクションとなります。

しかしながら、ウォブリングを抑えようとするために扁平にしていくと、水圧を受けきれなくなり、ファストリトリーブをした際に横滑り(アクションの破綻)が起こります。そのため、ウォブリングの制御は、ローリング、ピッチングを優勢にしていくことでウォブリングの要素を消すような調整が必要になります。

ピッチングの制御

クランクベイトは水圧を受ける力点が重心より前にある。リップの長さがボディの長さを超えなければ、クランクベイトの頭の辺りに力点がくる。

ピッチングの安定にはウェイト設定でバランスを取ります。クランクベイトは頭下がりで潜行するので前傾姿勢を取るようにして効率よく潜行へ誘うことができます。クランクベイトにはアクションが必要なため、水圧を受ける力点は重心より前にある必要があります。

一方でこの力点が重心より後方にあると、重心に対してボディが追従するようになっています。(風見安定)これはアクションを必要としない直進性が必要なルアーに応用されています。(テールがついたビッグベイトやティンセルのついたI字系ルアーなど)

アクションを制御する方法(リップ編)

クランクベイトなどリップつきのルアーは、リップのサイズや取り付け角度によってアクションを変えることができます。水圧を受けたリップはどの方向に回転しやすいか?ということを考えてみます。ここではボディ形状に関しては無視します。

リップが水圧を受けると、より力が掛からない方向へ回転しようとします。長辺を軸にして、短辺方向へ回転して水圧を逃そうとするため、リップの角度がボディの角度に対して小さいほど、回転軸が揃うのでローリング気味の動きとなります。反対に、角度が大きいほど軸が揃わないのでヨーイング(ウォブリング)気味の動きになります。

さらに前者はボディの長さ分、ピッチングの動きも後者に比べてより拘束します。ピッチングを拘束すればするほど、アクションがロールやヨーに逃げることなく、効率よく潜航します。後者の場合であれば、ピッチングが拘束されず潜航しない代わりに、ロールやヨーのアクションが優勢となります。

リップ幅を狭くすると、さらに短辺方向へ回転させやすくなり、ローリングの特徴が出やすくなります。ヨーイング(ウォブリング)をさせたければ、その逆を行えば良いです。

リップを長くすると、ピッチング方向の回転を拘束するため、潜航深度が大きくなります。この時、リップの面積も同時に大きくなるため、ローリング、ヨーイング(ウォブリング)共に大きくなります。

事例を見てみよう

こういった視点からクランクベイトを見てみると、どれも特徴的で面白く、さらに言えば設計の意図までも見えてきます。すごくわかりやすい動画があるのでご紹介したいと思います。

思わず見入ってしまう水中映像ですが、なかなか定点で比較できる資料はありません。いくつかのルアーをピックアップして自分なりに解説してみます。

バルサB2はラウンドボディでリップも寝かせ気味というローリングの特徴が、カバー回避のために搭載した幅広リップのウォブルアクションをうまく押さえています。設計の意図としてカバー回避能力を持たせたいが、引抵抗はそこまで大きくしたくない、ということが読み取れます。

ウィグルワートはテールにかけて扁平になっていてロールアクションを押さえており、幅を大きくしたリップがルアーを大きくウォブルさせています。リップ角度は寝かせ気味ですが、ウォブルアクションが完全に優勢です。潜行角度を稼ぐためにリップは寝かせるけども、アクションは大きくしたい、といったところでしょうか。

ワイルドハンチは弱いアクションとして紹介されています。体高を抑えて重心を高くしており、ウェイトも後方気味なのか水平に近い姿勢で泳ぐため、ロール軸がしっかりと見えており、ロールアクションが如実に現れています。リップ幅も狭く、徹底的にロール主体の動きになるように工夫されています。

終わりに

クランクベイトのアクションは設定によっていろんな表情を見せます。この他にもアクションの質だけではなく、カバー回避性能を上げたいとか、飛行姿勢を安定させたいとか、それぞれのクランクベイトにはそれぞれの思い入れがあるはずで、その違いを楽しむのも釣りの醍醐味ではないかなあと思ったりもします。

ロール、ヨー、ピッチの3軸を基本的な考え方として持っておけば、いろんな考え方に応用ができるということをこの記事で紹介いたしました

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