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【連載#5】今日、セックスワーカーになりました日本橋ホテルヘルス「おいらん」かんな(35歳)

かんな35歳。肉感的なボディを強調したタイトなワンピースに、派手目の巻き髪。よもや人妻だとは思えない。結婚歴は10年目に突入した。

10ほど歳が離れた夫とは、18歳から大阪・北新地で始めた水商売で客と嬢として知り合い、25歳で結婚。子供はいない。

よく言われるように、スケベな社長や素性がハッキリしない成金連中に水揚げされたワケではなかったが、普通のサラリーマンであることからして給与は安定。家事をこなし、愛する夫の帰りを待つ日々。コロナの余波で遡口を凌ぐシングルマザーや未婚女性からすれば羨ましい限りの生活は続くのである。

ところが半年前、彼女は突如としてフーゾク嬢になった。

「旦那の稼ぎでも生活はできました。でも、自分で自由に使えるお金が欲しかったのです」

結婚したからといってオシャレはしたい。炊事洗濯をして録画したテレビドラマを見るだけの毎日は、どこか味気ない暮らしぶりだった。彼女が語る負の側面は、どこかで聞いたような話の域を出ていない。穿った見方をせずにはいられないのは、僕だけではないだろう。追及すると、やはり自分をキチンと曝け出す機会を身バレの恐怖が奪っていた。

「真面目すぎるなって思う過去の自分がいて。セックスも、旦那に求められるのが辛かった。そんなにし好きじゃないっていうか、男性経験が少なく苦手だったんですね。男の人の前であんまり自分をさらけ出せないんですよ。で、そういう自分を変えたかった」

僕から目線を外し、同席した男性スタッフとアイコンタクトで同意を得ると、意を決して彼女は語る。過去を改ざんし別人として取材を受けることなどこの業界ではよくあることだ。

だからと言って「はい、そうですか」とはならない。その見た目からして、世の男どもが放っておくハズはないだろう。まだ隠してることがあるに違いない。およそホスト狂いか借金かと疑ってかかる僕に、男性スタッフの助けが入る。

「コレ、かんなさんのフーゾク入り前の写真です」

髪はボサボサ、近所のスーパーで一式揃えたような服装――別人と見間違うほど地味なオンナが写っていたのである。嘘偽りない言葉だったのである。オトコに抱かれ、彼女は見た目も性格も変わった、文字通り丸裸になることで。

「水商売経験も、実は場末のスナックです。ほんと、売れないホステスでした」

いまや人気嬢になり、富裕層たちから指名される様は、売春婦と実業家のシンデレラストーリーを描いた映画『プリティーウーマン』さながらだ。

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