周南公立大学の先駆的モデル一地域のWell-beingに貢献する新しい大学モデル

 山口県の周南公立大学は教育理念と教育目標に次のようにウェルビーイングを明記している唯一の公立大学である。

<教育理念>
学生の個性の伸長を本旨とする「知・徳・体」一体の全人教育と地域貢献大学の使命を追求し、その上で、地域社会に根差し、学生一人一人の多様な幸福の実現を目指し、持続可能な社会全体のWell-beingに貢献できる人材の育成を目指す。
<教育目標>
1 世界的視野と幅広く豊かな教養を有し、多様性と包摂性を認め、自己肯
  定感と主体性をもった意欲ある人材を育成する(個人の成長)
2 実践的な知識、問題解決能力を持ち地域課題の解決や豊かなまちづくり
  に取り組むことのできる人材を育成する(地域社会への貢献)
3 専門的な知識・技能を備えるとともに社会の変化を鋭く意識し、社会の
  持続的発展とイノベーションを牽引できる人材を育成する(社会全体の
  発展)
4 個人、地域、社会全体のWell-beingを高めることに貢献できる、分野横断的・学際的な人材を育成する(Well-beingの向上)

●「周南Well-being創生」科目の必修化
 2024年度から開始する新カリキュラムでは、1年次・2年次にウェルビーイングに関連する授業を全学部学科必修とし、1年次必修科目「周南Well-being創生入門」では、ウェルビーイングとは何か、について基礎的な知識を習得する。また、2年次必修科目「周南Well-being創生論」では、学内の多様な分野の教員がそれぞれの立場から、自身の研究分野に基づいてウェルビーイングを論じる。
 さらに、今年4月に完成予定の新校舎の1・2階を「Well-being Square」と命名。地域との交流を図るオープンな場にして、ウェルビーイングに関する学びを広く展開するという。
 同大学の「志」(存在意義)」は、教育・研究・社会貢献を通して地域のウェルビーイングを高め、日本一のまちづくりの中核となることにある。「ミッション(使命、役割)」は、地域の持続的発展と価値創造のための「成長エンジン」となって、地域が求め地域の発展を牽引する人材の育成と地域が必要とする研究を推進することである。
 「ビジョン(目指す姿、ありたい姿)」は、地域に根差し、地域の課題を地域と共に解決し、地域に愛され、地域に信頼され、地域が誇りに思う「地域に輝く大学」となって、人財育成と研究成果の地域への還元(社会貢献)を通した高い評価の獲得にある。
 「バリュー(価値観、行動指針)は、学生のためになるかどうか、地域の発展につながるかどうか、学生の成長と地域の発展を体験することの喜びの共有にある。

●周南公立大学学長の3つの提言
 地域のウェルビーイングに貢献する新しい大学モデルを確立するために、「地域の成長エンジン」を担う大学が求める3つのサポートとして、周南公立大学の高田隆学長は次の3つの提言を行っている。

⑴ 「地域のWell-being」に取り組む大学・自治体をサポ―トするプログラ
 ム➡地域に根差した活動を展開する大学と自治体が「地域のWell-being」
 に貢献する機会の創出と実装支援
⑵ Well-being専門人材の派遣➡幅広い分野をつなぐWell-being研究・教育
 専門人材(Well-beingコーディネーター)の派遣
⑶ Well-being教育の成果を図る指標、可視化メソッドの開発・展開➡分野
 横断的にWell-being教育を推進することによる効果を評価する方法の確立
 に対する支援
 
 行政・地域住民・企業・団体と大学の距離が近く機動性があるので、可視化とモデル化が容易で、成果を他地域へ波及しやすく、周南公立大学のこの先駆的な試みは、地方都市でウェルビーイングを実践するモデルとして極めて注目される。

 

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