「包括的性教育推進法」制定の謀略

性道徳を否定する「包括的性教育」は教育振興基本計画に反する
 昨日の「note」拙稿で指摘したように、今年度から始まった第4次教育振興基本計画の基本方針の2本柱である「持続可能な社会の創り手の育成」と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」と真っ向から対立するのが、”人間と性”教育研究協議会が推進する「包括的性教育」である。
 同協議会の代表者であった浅井春夫著『包括的性教育』(大月書店)には、「政府・文科省が強引に進める道徳教育の目的と内容に真っ向から対抗するのが性教育である。道徳教育と性教育とは相容れない目的と内容がある」と明記している。
 教育目的として提示された「個人と社会のウェルビーイング」を実現するための倫理基盤、すなわち「モラル・エージェンシー」(望ましい社会の実現を目指して変革を起こす倫理的基盤」が重要課題となり、「日本社会に根差したウェルビーイング」を中核とした学校教育、道徳教育が求められているにもかかわらず、「性道徳・性規範」を全面否定する「包括的性教育」は明らかに第4次教育振興基本計画の基本方針に反する。
 同団体の季刊誌『SEXUALITY111』は「バッシングに抗して30年、性教育の未来をひらく」という特集を組み、「バッシングは日本軍『慰安婦問題』問題から始まった」として、「バッシングの流れ」の年表の冒頭に日本軍「慰安婦」の強制連行を掲げ、映画「ナヌムの家」の公開初日に右翼がスクリーンに向けて消火器を噴射、「慰安婦」問題攻撃に「夫婦別姓」批判が加わった、としている。
 「慰安婦」問題や「夫婦別姓」等の政治的対立を「包括的性教育」の名の下に、こども家庭庁論議に持ち込み、米英で親と学校の対立・分断が深刻化している現状を日本で再現しないように歯止めをかける、以下のような「包括的性教育推進法(案)」の制定を目指している。

包括的性教育推進法の具体的条文案

 第1章総則の第1条(目的)、第2条(基本理念)として「ジェンダー平等」を掲げ、第4条(子ども・若者の包括的性教育を学ぶ権利の保障)には、乳幼児期から大学、社会教育を含め、第5条(国の責務)として、「法制上又は財政上の措置その他の措置」、第6条(地方公共団体の責務)にも同様の責務を明記している。
 さらに、第2章「包括的性教育推進計画」を3年ごとに策定し、第8条(年度別実施計画の策定)、第9条(包括的性教育推進状況の調査等)、第10条(国の包括的性教育推進委員会)、第11条(都道府県・地方公共団体の教育委員会)、第12条(学校等における包括的性教育の推進体制)。
 第3章「包括的性教育の基本方針」として、第13条(性教育政策を積極的に推進する措置)、第14条(ユネスコ編『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』を活かした性教育の体系化)、第15条(生涯教育としての包括的性教育)、第16条(教員養成課程及び保育士・幼稚園教諭養成課程における必修科目)、第17条(性教育政策への政策決定過程への参加)。
 第4章「包括的性教育推進の関連機関・団体等への支援」として、第18条(包括的性教育を推進する機関・団体の設立・運営)、第19条(非営利法人及び非営利民間団体への支援)を明記している。

「グローバル性革命」の日本版

 これはまさしくクビー著『グローバル性革命一自由の名によって自由を破壊する』が警告した「性道徳・性規範」の解体を目指す「グローバル性革命」の日本版に他ならない。「包括的性教育」の名のもとに安倍政権下の「性教育の歯止め規定」の撤廃を目論んでいるのである。
 同法案を策定した浅井春夫氏は、「これからの運動の展望として、学習指導要領におけるいわゆる”歯止め規定”の撤廃の課題も含め、包括的性教育推進法を国会で成立させるための全国ネットワークの結成をめざします・ご協力ご支援のほどを!」と訴えている。
 第4次教育振興基本計画の基本方針である「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」のためには、学習指導要領の「性教育の歯止め規定」を踏まえた、日本社会に根差した「日本型包括的性教育」(5月10日付「note」拙稿参照)がふさわしい。
 かつて私が拙著『間違いだらけの急進的性教育』(黎明書房)と月刊誌『文藝春秋』並びに『週刊文春』で詳述した「性革命」を目指す”人間と性”教育研究協議会が法律的な基盤形成によって、「性教育政策への政策決定過程への参加」「教員養成課程における包括的性教育の必修化」「関係団体への支援」等を求めることは、言語道断の謀略と言わざるを得ない。
 
 


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