「ありがとう」の原点一妻の詩⑸

致知出版社の月刊誌『致知』の読者の会の木鶏クラブロサンゼルスの結成2周年記念講演会で出会った97歳の浅井菊次氏は老人臭さや孤独感が全く感じられない「永遠の青年」であった。
 浅井さんは「おはよう!浅井青年!」と笑顔で自分に挨拶してから一日を始めるのだいう。以前、靖国神社崇敬奉賛会主催の講演会で茶道裏千家の千玄室宗匠に若さの秘訣は何かと尋ねたところ、「毎日、鏡に映った笑顔の自分に『お早ようございます』と挨拶することですよ」という答えが返ってきたことを思い出した。
 高齢者が3分の1を占め、独り身で過ごす人が過半数を超える時代を迎えようとしているが、、そういう孤独な高齢化社会を「寂しく」ではなく、心から感謝して生きる人に出会って嬉しかった。「高速道路を今日もルンルン気分で走っています」というメールが届いて驚いた。
 仙台テレビで毎月対談していた作家の草柳大蔵氏は、妻と子供に先立たれた俳人の飯田蛇笏が「誰彼も非ず 一天自尊の秋」と詠んだ晩年の境地を「死に甲斐」と表現したことを思い出した。
 毎年ロサンゼルスで浅井さんと会うのを楽しみにしていたが、20代の若い女性たちの浅井ファンクラブの方に、どうして浅井さんはそんなに魅力があるのかと尋ねたところ、「夢しか語らないから」という答えが返ってきた。浅井さんとの感動的な出会いを、妻が次のような詩にした。

「ありがとう」の原点

朝 台所に立つと 思い出す あの方の言葉
朝起きて 鏡に映る自分に「ありがとう」
生かされていることへの「ありがとう」
自分でコーヒーをいれて「ありがとう」

そのような心で朝を迎える人

九十代半ばを過ぎ
背筋を伸ばして
いつも優しい満面の笑みのあの方
あの方にお会いできてよかった

あの方の「ありがとう」は「ありがとう」の原点
さあ 私も素朴に淡々と「ありがとう」の原点に立とう

 「少年よ、大志を抱け」と詩に詠んだクラーク博士は「この老いた私のように」という言葉で詩を締めくくったことを忘れないでいよう。


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