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音楽と思い出~人の心の奥に残るかけがえのない記憶

過去に聞いた音楽には、そのときの情景も一緒になって記憶されていることがある。今まで聴いてきたすべての曲がそうなるわけでなく、情景も一緒になって記憶されるような特別な曲は、極めて少ないと思う。特に、昔好きだった曲や、何度も何度も聴いていた曲には、その傾向が強いのではないだろうか。

一般的に人間の記憶というのは、視覚的な要素、つまり景色や風景など目に入る情報に関するものが大多数を占めている。はるか昔の過去の写真を見ると、そのときの情景が目に浮かび、懐かしい気持ちになるのはよくあることだ。

同じようなことが音楽についてもいえる。昔、よく聴いていた音楽が、なにかのきっかけでそのときの周りの情景と合体して、それが一体となって記憶に残るのである。なので、その音楽を今聞くと、そのときの情景がよみがえって、まるで写真を見ているかのような懐かしさを感じるのである。

昔の写真(視覚情報)からそのときの情景(視覚情報)を思い起こすことは、きわめて普通である。しかし、昔聴いていた音楽(聴覚情報)からそのときの情景(視覚情報)を思い起こすことは、そう多くはないだろう。それゆえ、音楽によってよみがえる記憶というのは、心の奥深くに潜む、自分にとってかけがえのない大切な記憶なんだろうと思う。

ワタクシの場合、いろいろありますがその中でのトップワンは...

イエロー・マジック・オーケストラのアルバム"Solid State Survivor"を聴くと、西武新宿線を思い出す。時は1980年、私が大学1年の時である。当時、バンドを組んでいたメンバーのひとりが西武新宿線沿線に住んでいて、バンド練習のあとによく立ち寄っていた。おりしも、このころ、SONY の初代ウォークマン(TPL-L2)が発売され、さっそく購入。そしてこの年は、YMO が日本で大ブレークした年でもある。

私は、"Solid State Survivor"を録音したカセットを入れたウォークマンを聴きながら、高田馬場駅から西武新宿線に幾度となく乗り換えていた。そのときの景色が"Solid State Survivor"に無意識にしっかりと記憶づけられてしまっていたのだろう。今から思うと、アルバム"Solid State Survivor"の楽曲の思い出というよりも、細野晴臣さんが奏でるベースパートのシンセサイザー「アープ・オデッセイ」の低音に魅了されていたかもしれない。

初代ウォークマンTPL-L2 というポータブルプレーヤーのヘッドフォンから再生される低音は、きわめて明瞭で感動すらした記憶がある。もちろん、YMOの楽曲も素晴らしいが、楽音再生技術という観点からして、その音楽ソースを余すところなく再生するという設計技術に対する SONY のエンジニア魂に、敬意を表したいと思ったほどである。(当時、私も電子工学専攻の大学生だったので)。

そんな経緯で、イエロー・マジック・オーケストラのアルバム"Solid State Survivor"を聴くと、私の青春時代だった1980年の西武新宿線を思い出すのです。

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