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-イヌ、ヒトと暮らす-〔閑話〕犬

そのヒトと出会ったのは、人間の暦では2021年の6月30日のことだったらしい。

ぼくはなんだかせまいかこいのなかにいた。

ブーブにのっけられてここにつれてこられた。そのうごくおうちをブーブというのはあとからおぼえた。

まわりはなんだかとってもうるさかった。キャンキャン、ニャァニャァ。たくさんいるみたいだ。

ぼくとおんなじようないきものとちょっとちがういきものがいるみたい。やっぱりせまいかこいのなかでキャンキャン、ニャァニャァいっている。

あんまりうるさいのでぼくはずっとねてることにした。だってなんにもおもしろいことがないんだもの。

ずっとねているわけにもいかないのでときどきおもちゃであそんだりもした。ごはんがまちどおしかった。ごはんがくるまでじっとがまんだ。やっぱりねてるのがいちばんだ。

ペットショップのせまいケージの中で、そのイヌはちいさく丸まってひたすらに眠っていた。まるで周りの喧騒をやり過ごすにはそうするしかないとすでに悟っているかのように。

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目をあけた。こっちを見た。目があった。立ち上がって寄ってきた。ケージから鼻を突き出してクンクンと鳴いている。

お店の人がケージから出してくれた。

なんだかおちつくなあ。このヒト。なつかしいにおいがする。ぺろぺろ。ぺろぺろ。

それがそのイヌとの出会いだった。帰り道、すでに心は決まっていた。翌朝、開店と同時にふたたびそのイヌと会った。確信はさらに深まった。それは揺るぎのないものだった。

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