ブラックの効用。あるいは高揚。
忙しい時期とはいうのは、たまにはあるものであって、仕事をして、家に帰って、ご飯を食べて、そして寝て。そんなことを繰り返すだけの日々が続く。
慢性的な睡眠不足の中で、ご飯を食べたあとには猛烈な眠気が襲ってくる。頭が働かなくなったその状況で、電気を消し、ヘッドフォンをして、ガンガンと大きな音で音楽を聞き、脳みそをシェイクする。歌詞の言葉は溶解し、言語としての意味を成さないリズムと音階へと還元されていく。
普段は健康的な生活を送り、各種ガジェットを使って睡眠をトラックしているため、こんなにも頽廃的な、刹那的な、一周回って禅的な境地へと至る契機はない。ぎりぎりまで脳みそを振り絞り、使い切り、その上で音楽でシェイクをして、半分麻痺をした頭。
起臥の境界線上を、視覚も聴覚も手放して、どちらへ落ちるでもなく歩いていく。忙しい時期にしか味わえない、ハイな気分である。
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