カエルの楽園


 百田尚樹著「カエルの楽園」を読みました。著者は作家で、私も著作をいろいろと読ませて頂いておりますが、本書は社員が貸してくれたので手に取りました。タイトルから「風の中のマリア」のような内容かと思いましたが、そうではありませんでした。


 主人公はアマガエルで名前はソクラテスです。ソクラテスは、生まれた地で頻繁に外敵に襲われるようになり、若いカエルを60匹引き連れて、新天地を求めて旅に出ます。しかし、行くところ行くところで、外敵に襲われ、とうとうソクラテスとロベルトの2匹だけになったところで、ナパージュというツチガエルの国に辿り着きます。


 ソクラテスとロベルトは、ナパージュで快く迎えられます。ナパージュは平和な国で、外敵に襲われることがありません。近くにはツチガエルやアマガエルを食べてしまうウシガエルが住む沼がありますが、ウシガエルが襲ってくることはありません。ナパージュのカエルに理由を尋ねると「三戒」があるからだとのこと。「三戒」とは

一、カエルを信じろ

一、カエルと争うな

一、争うための力を持つな

というものですが、このあたりから何となく著者の言わんとするところがわかってきますが、これは日本国憲法九条のことを指しているのでしょうね。ナパージュという国名も不自然ですが、「Napaj」を逆にすれば「Japan」です。


 ナパージュのカエルたちは、「三戒」を信奉しています。また、朝晩、ナパージュで一番の物知りといわれるデイブレイクというカエルが説法を行っており、そこでも「三戒」の大切さを説きます。このデイブレイクはマスコミか新聞を指しているのだと思いましたが、デイブレイクという名前から、柴田恭兵の「横浜デイブレイク」がちらついて仕方がありませんでした。改めて「デイブレイク」の意味を調べてみると「夜明け」だったので、なるほどそういうことかと納得させられました。


 この「三戒」について異を唱える嫌われ者がいるのですが、その名も「ハンドレッド」、これは著者本人でしょうね。ハンドレッドは、スチームボートという鷹についてソクラテスに教え、ソクラテスはスチームボートのところにも話を聞きに行きます。スチームボート曰く、かつてツチガエルと争い、ツチガエルを虐殺した歴史があり、その後、ツチガエルはスチームボートに居心地の良い場所を与えるなど便宜を図り、スチームボートはその代わりにナパージュを守っているということでした。スチームボートは完全にアメリカですね。「三戒」も、もとはスチームボートが作ったということでした。


 そんな感じで、いまの日本をなぞらえたナパージュ、他にも少子高齢化、自衛隊の問題など様々に問題提起したうえで、結局、ナパージュのツチカエルたちは、隣の沼のウシガエルたちに国を占領され、奴隷になってしまいます。なんとも切ないラストで物語は終わりますが、なんとかこのようなことにならないように政治家の皆様には頑張ってほしいですし、私自身が出来ることがあればしっかりやっていきたいと思います。

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