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ALACTモデルを形骸化させないために

いくら出来事を振り返ることが大事とはいっても、

生徒がわけのわからんこと言いよるんで、ガツンとシめてやったんすよ

では振り返りは深まらない。
場面の捉え方が雑で、また、自分の(教師側の)視点からしか見てないから。

そんなときに役立つのが、コルトハーヘンのALACTモデルに出てくる「9つの問い」。文脈を押さえたうえで、教師側と学習者側がそれぞれ何を行ったか、何を考えたか、何を感じたか、何を望んだかを考える。そして、そこから浮かびあがってくるズレやら欠けやらを、問題を掘りさげる(「第3局面 本質的な諸相への気づき」に向かう)手がかりにする。

F.コルトハーヘン編著、武田信子監訳『教師教育学』学文社、2010年、p.54 & p.136
をもとに私が作成・使用しているスライド。左下が「9つの問い」。

先の例なら、生徒が具体的にどんな言葉を発したのか、自分はそれを聞いてどう感じ、どんなことを考えて、具体的に何を行った/言ったのか、生徒がその言葉を発したのは生徒側から見るとどんな思いや考えがあったのか、といったことをまず考えることになる。

「リフレクション」が(限られた範囲ではあるが)流行るなか、「9つの問い」の表が一人歩きして、これを埋めればそれで振り返りがうまくいく、みたいな機械的で安易な受け止めがしばしば見られる。
が、この表がどういう点で、どのようにして有用なのかについてのイメージは、土台としてもっておいてほしいところ(私としては、上の例は分かりやすいのではないかと思っているが)。

なお、冒頭の例は、振り返り方こそ雑なものの、リフレクションの大事なポイントを表してもいる。
それは、自分の心が動いたところ(驚いたのであれ感心したのであれかき乱されたのであれ)を振り返りの起点にするということ。
これもまた、形式化された手順でリフレクションが課される場合に、しばしば抜け落ちがちな点。

【参考】
「リフレクション」への手引きとしては以下の文献もどうぞ。

  • 渡辺貴裕「「リフレクション」を考え直す」筑波大学附属小学校初等教育研究会『教育研究』1450号、2022年12月、pp.20-23

  • 坂田哲人ら『リフレクション入門』学文社、2019年


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