闇の先へ20

本の執筆の副産物であるこの断章も、そろそろ終わりを迎えようとしている。2月18日の深夜、俺は著者校正をしている。自分が書いた生の原稿を、編集者が整形してくれたものを、さらに自分の目でもう一度確認する。こうやって一冊の本が世に出る。その最終コーナーを回ろうとしている。俺のできることはもうそろそろ終わりなのだ。

俺は結局闇から抜けられるのだろうか。本の最後で俺は「光」を書いた。迷い続けながら書いた本の最後に、俺は少しだけ光をみつけた気がしたからだ。だがその光はとても淡く、おそらくはまた見失うだろう。それでも一度光をみつけたかもしれないという幻想があれば、次歩き出す時、ほんの少しだけ心は軽いはずだ。歳をとるにつれて関節は痛み、筋肉は衰え、物理的にできることはどんどんと少なくなっていく。それでも、そういう物理の摩耗以上に、心に穿たれる楔の方が、よほど人の足を鈍らせる。人を闇に縛り付けるのは、他ならぬその人の心なのだ。俺はほんの少しだけ自分自身の内側に光を見つけることができた。それはこの本を書いた素晴らしいご褒美だ。

この後どうなるのかは俺にはよくわからない。たくさんの友人たちが本を予約してくれて、俺はその幸福に感謝したいのだが、一方において、なりふり構わず書き上げたこの本を受け入れてもらえるのか、それが今のところ少し心配なのだ。あまりにも優しさが足りなかったのではないか、そんな気がしないでもない。

それでも、書いてよかったと思う。初めて「自分の本」をちゃんと出せたように思う。できればこの本を読んだ人が、俺と同じように、ほのかな光を、迷いの中に見つけてくれればと願う。

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