放りっぱなしになった数々の事柄について

 怒りに任せてこの文章を書いている。何に対しての怒りか。これまでやることなすこと全て、半端なまま途中で放り出して、それが堆積していることへの怒りである。堆積といえば、無計画に本を買ったあげく積読にして、リボ払いの残高がかさんでいることも深刻ではあるが、とりあえずその話はおいておく。
 まどろっこしい前説は省いて、これまでに俺が半端なまま放り出しているものを以下に列挙してみる。
・ドイツ語
・C++のゲームプログラミング(Siv3D)
・ラノベ
・イラスト
・線形代数
・微分積分(大学教養レベル)
・物理学(大学教養レベル)
・論理学
・現象学など哲学諸分野のエッセイ
etc..

 いろいろ言いたいことはあるが、この中で何が最も罪深いか敢えて決めるなら、一番下にある哲学の分野だろう。何しろ、現象学の開祖であるフッサールの著作をはじめとして、資料となる本をそれなりの冊数でまとめて買ったせいで、まあまあな額の金がかかっている。フッサールの現象学を起点として哲学の諸分野をしっかりと噛み砕いてエッセイにしようと思ったのだが(仮題:『101回目の哲学入門』)、いろいろなことをしているうちにその案は流れてしまった。また、調べているうちにフッサールを語るにはカントにあたらなければいけないということもわかってきたので、カントの解説書もいくつか買ったのだが、それらはほとんど読まれずにタンスの上で積まれたままになっている。
 論理学への取り組みも進んでいない。俺は今、精神分析についての連載記事をこのnote に書こうとしているのだが、それの少し前には論理学を独学していた。しかし論理学というのは、こう言うのもなんだが、入門レベルでは正直あんまりおもしろくないのだ。やったことがある人ならわかると思うが、真理値という尺度を使って論理の正しさを測る分野、命題論理においては、論理学の技法を使って何か新しいことがわかるという雰囲気はそんなにないのである。でもまあ、戸田山和久先生の『論理学をつくる』という本はそういう学習者の心理をしっかりフォロー(?)してくれていて、なかなか楽しく読み進めていたのだけれども、落ち着きのない俺はある思い付きをきっかけに精神分析のほうへなびいてしまった。学校がそれなりに忙しいせいもあって、論理学は現在全く手を付けていない。
 じゃあこんな記事書いてないでそっちに取り掛かれよという指摘はもっともだが、状況を整理するためにも、もうしばらく書いてみる。ドイツ語は、いっときはドイツ語検定2級を受けようかというところまでには来ていた。というか、学力のピーク時にはそのくらいの位置にはあったのだが、これも他のことが挟まったりしたせいで学力は低下の一途をたどり、結果ドイツ語検定の受験を申し込みはしたものの受けずに終わるという最悪の結末を迎えた。
 イラストに関しても同じくしんどい状況である。もともとの俺の画力は小学生の落書き程度しかなかったのだが、ある日ひょんなことからClipstudio がiPad に導入され、レイヤー機能というものを初めて使ってみたところ多少の上達をみるに至った。しかし、イラストはかなり精神的に疲弊するので、手を付けられないどころか忌避感すらあるのが正直なところだ。
 線形代数に関してはジョルダン標準形くらいまではできるようになったから、一応大学教養レベルはまあ終えたと言えるだろう。とはいえ、和空間や商空間をはじめ、ピンポイントに理解が不足している箇所がいくらかある。目標としては、圏論をある程度使えるようになりたいと思っているので、そこまではまだしばらく遠い。勘のいい方ならわかったかもしれないが、俺が今のところ思い描いているロードマップとしては、「線形代数と論理学をしっかり身に着けて数学基礎論も多少は理解し、圏論や代数幾何の本をある程度読めるようにすることで、情報科学を基礎的なところから理解する」というのが目標である。なんでそんなことをするのかといえば、コンピューターで脳のシミュレーションをする分野にそのうち片足を突っ込みたいということである。だから論理学についても、その方面の類書まで買いそろえてある……書いていて思ったが、ちょっと夢を見すぎているかもしれない。
 C++ に関しては、Unity とかUnreal Engine みたいな、UI が親切なゲームエンジンを俺が意固地に拒んでいるために停滞しているという事情もあって手つかずのままだ。一応、Siv3D というライブラリを使って、移動時の背景スクロール・障害物にぶつかったときの停止・歩行時のアニメーションくらいはできるようになった。これでざっと200行くらいのコードだが、俺の要領が悪いせいでかさばっている感は否めない。まあ、これはGPT-4の力を借りればだいぶ省力化できそうではある。
 こうして書いてみると、医学生の身で研究や実験をしながらいろいろなことをできているようだが、部活に入っていないから時間はあるのだし、しかしその時間を有効に使えているかというとやや微妙なところだ。
 怒りに任せてガーッと書いてしまったが、本当に困っているということが読んでくれた方に伝われば幸いである。金がないのはともかく、時間がないのは本当にきつい。でも俺、タイムマネジメント苦手っていうか、できないんだよね。その辺のことはまた別の機会で話そうと思うが、とある理由で隙間時間を使えない体質なので、それがネックになっている。ちょっとした時間でいろいろできるようになれたらいいのだが……

追記:
 脳のシミュレーションについては俺もあまりよく知らないのだが、その辺の詳しい話はさておき、例えば下に並んだ二つの図を見て「似ている」と感じない人は多分そんなにいないと思うのだが、どうだろうか? 素人考えかもしれないが、「似ている」と捉える方が自然ではないだろうか?
 圏論の概念は非常に普遍的に応用できるらしいので、個人的には、身に着けて損することはないだろうとなんとなく考えている。「ハイデガーが圏論を知っていたらきっともっと違うことを考えただろう」なんて話を聞いたりすると、哲学を研究しようとしている身としてはやはり気になるのである。

左は脳の扁桃体の回路(出展:脳科学辞典)で、右側はWikipediaの記事「像 (圏論)」からの引用。左図においては、矢印は「興奮」「抑制」という真逆の入力が混在しており、その二つもさらに細かい分類があるので圏論の図と単純には対応させられないけども、やっぱり似ている

6/26追記:
俺の小説『魚の名前は0120』が収録された本が今日、筑摩書房さまから発売されたようだ。読んでください。

太宰治賞2023

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