西井貴恒@国試浪人生

『太宰治賞2023』に小説作品『魚の名前は0120』が掲載。来年こそ研修医の予定 ※記…

西井貴恒@国試浪人生

『太宰治賞2023』に小説作品『魚の名前は0120』が掲載。来年こそ研修医の予定 ※記事などのコンテンツは所属する組織と無関係です

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コーラを自作し、炭酸飲料の可能性を探る

はじめに  コーラが高い。  先日、俺は道を歩いていて思わず目を見開いた。自販機にあるコカコーラの500mlのボトルが一本でなんと180円もする。はっきり言って、驚きを禁じ得ない価格設定である。俺はとっさにあたりを見渡した。ここは富士山の頂か、もしくはディズニーランドのただ中か。そうでなければこんなにコーラの値段が吊り上がっているなんてにわかには信じかねる。しかしいくら目を凝らしても視界に入るのは奈良県橿原市ののどかな街中の風景である……いや、橿原市も最近はおしゃれなカフェ

    • 存在することの与件:哲学『不安の克服』その1

       言葉を手にしたとき、我々は存在することすら許されない。  これは矛盾、ジレンマの片面であり、そしてある種のダブル・バインドの片面である。言葉はこのように逆らい難い桎梏を我々に課し、意地の悪い苦しめ方を倦むことなく続ける。それは自重というものをまるで知らない悪しき魂がごときである。千本の針の山はあなたがこの地に誕生する前から用意されていた。その針をこの地に植えたのは言葉であり、世間であり、社会性という不文律である。 『不安の克服』という哲学は、“構造現象学”という思想の下書き

      • 小説家になるために自分が目指していたことの振り返り;15歳から現在までのプレイバック

         甘えが生じていた。この十年あまりの自分についての話である。  その原因の一つとしては、頭の回転の速さを意識的に落としていたことが挙げられる。  なぜそんなことをしていたのか? 理由は二つある。一つには、自分の注意散漫な体質を制御するためというのがある。思考の速度が高ければ高いほど、不必要な考えや拙速な結論付けで、頭の中が溢れかえってしまう。これらは注意散漫の直接的な原因であるし、散漫になるのを解決したければ頭の回転を落とすのはどうしても避けられない。必ずしもこれだけでなんと

        • 『魚の名前は~』の振り返りなど 2023.12.18 【なぐり書きの日記】

          『魚の名前は0120』が商業誌『太宰治賞2023』に掲載されてもう半年となる。この作品をしっかり振り返る時期がそろそろ来たような気もするが、医師国家試験も近いので、ある程度簡便な形で今回は済ませておきたい。そのついでに、俺が長く構想している「変なラノベ」についても述べておきたい。  哲学上の問題として「存在」なる概念を扱うにおいて、人間にとっての「存在」と、伝統的な形而上学が目指していた「存在」の徹底的な区別はこの変なラノベのテーマというより俺自身の哲学的営みとして重要なもの

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        コーラを自作し、炭酸飲料の可能性を探る

          【なぐり書きの日記】2023.09.19 Twitter 勉強法

           勉強の経過を記録していこうと思う。それもTwitter──”X”とはまだ呼びなれないし、聞きなれないので、しばらくはこう呼ぶ──にである。Twitter のスマホアプリには便利な機能があり、特定のアカウント内の投稿に範囲を限定してキーワード検索ができるというものだ。だから、記法を統一すれば自分が何をいつ勉強したかが簡単にわかるということである。  衆人の目にさらすことで、自分の勉強の進捗に対してなあなあで済ませることができなくなるのは効果的だろうという目論見でこれをするわけ

          【なぐり書きの日記】2023.09.19 Twitter 勉強法

          【なぐり書きの日記】2023.09.16 フィクションの構想と身体化(無料部分で完結)

           身体化という概念がある。ややこしい、というより厄介な概念だ。この言葉はかなりあいまいに、直感に任せて使われる向きが強く、それゆえ論理の正当性を恣意的に作り出している──すなわち、身体化されていれば是、という格調ある符牒によって、評する者の個人的好みを正当化してしまう──風潮すらある。ポストモダンの論者において、身体化という概念やお作法は便利な懐刀であったし、自家薬籠中のものであった。しかしその薬篭の中には一体、何が入っていたというのか?  思想史における語の使われ方を問いた

          【なぐり書きの日記】2023.09.16 フィクションの構想と身体化(無料部分で完結)

          【なぐり書きの日記】2023.08.16(水)本屋で200冊見てきました

           14日は一日中出かけていた。あまりにも最近うだつが上がらないので、ここは早起きして外に出てみようと考えたわけだ。台風もこれから立て続けに来るようだし、しばらく行けなくなるかもしれない大阪市内のジュンク堂に、気になる本を見に行ったのである。  俺は本屋に長居するのが全く苦ではない。6時間から7時間くらいまでなら休憩を挟まずにひたすら歩き回って目当ての本を続々とチェックし続けることができる。honto のほしい本は大量に積みあがっているが、これを紙のノートか何かに整理して、棚番

          【なぐり書きの日記】2023.08.16(水)本屋で200冊見てきました

          【生存戦略】有料連載はじめます

           自堕落である。野原しんのすけのよく言うセリフとして「ゴロゴロするのに忙しい」というものがある。母親の野原みさえにとってこれは言い訳でしかないが、俺はその気持ちが痛切にわかる。ゴロゴロしなければそのあと活動的になることができないのだ。気力を蓄えている、というと語弊がある。というより、活動していて取っ散らかった頭の中が整理されるのを待つ、という具合だ。俺の頭の中は頻繁に散らかるのだが、全力で活動しようとするとやはり頭の中はあらかじめ「ととのって」いなくてはいけないため、ゴロゴロ

          【生存戦略】有料連載はじめます

          【なぐり書きの日記】2023.08.11(金)

          ※この記事は連載ものです。本来なら有料で販売したいところですが、内容があまりに貧弱すぎて、有料で売りつけるのはどう考えても憚られるので、初回ということもあって無料で公開します。次回以降はもうちょっと内容もあると思うので、許して!  とりあえず今しないといけないことがある。論文が2本あって、それをしっかり読み込まなくてはいけない。だが論文というのは結構読むのに時間がかかるものだ。とりあえず1本読みたいところだが、実は以前から読んでいて中座しているものもまた別に1本ある。これは

          【なぐり書きの日記】2023.08.11(金)

          精神分析を知ってみる ① 男性の中に棲む「未完の女性」

          ※今回の話のテーマはあくまで医療に関することですが、精神分析というテーマを扱う以上、性的な事柄が非常に多く、人によっては大変不快を催すような記述があります! 少なくとも食事中に読むことは推奨しません! 僕は注意しましたよ! また、執筆者は現在学生であって臨床心理学や精神医学の専門家ではないので、内容の信頼性は何ら保証されていないことにご注意ください!!  人間は劣等感を覆い隠すためならいくらでも自分をあざむく、すなわち自分に噓をいくらでもつく、という人間理解は現代ではほとん

          精神分析を知ってみる ① 男性の中に棲む「未完の女性」

          放りっぱなしになった数々の事柄について

           怒りに任せてこの文章を書いている。何に対しての怒りか。これまでやることなすこと全て、半端なまま途中で放り出して、それが堆積していることへの怒りである。堆積といえば、無計画に本を買ったあげく積読にして、リボ払いの残高がかさんでいることも深刻ではあるが、とりあえずその話はおいておく。  まどろっこしい前説は省いて、これまでに俺が半端なまま放り出しているものを以下に列挙してみる。 ・ドイツ語 ・C++のゲームプログラミング(Siv3D) ・ラノベ ・イラスト ・線形代数 ・微分積

          放りっぱなしになった数々の事柄について

          人ならざるモノの意志:『新世紀エヴァンゲリオン』について

           先日友人から聞いた話。日本人のキリスト教信仰にはある特徴が目立っているとのことで、いわゆるご利益を求めてしまうところが日本人の信仰の弱さだと彼は語っていた。彼に教えを授けた(?)聖職者は南米の出身者らしく──南米のキリスト教信仰はそれはそれで元々のキリスト教のかたちと大きく違うとは思うが──神という絶対者を前にすると自分自身がどのように惨めであろうが困窮していようが、信仰以外の選択肢はない、という気概があるとのことだ。だから日本人が神仏に対してご利益を求める態度はキリスト教

          人ならざるモノの意志:『新世紀エヴァンゲリオン』について