2強は両雄並び立たず
「2強対決は両雄並び立たないが、3強対決は堅い決着となる」という主旨の競馬の格言がある。枠連が馬券の主流であった時代における格言だけに、強い馬が2頭いて、その馬同士のワンツーフィニッシュとなるよりも、強い馬が3頭いて、それらの中から2頭で決着する可能性が高いのは当然のことのように思える。しかしこの格言が表現せんとするのは、単なる確率論ではなく、競馬のレースにおける機微の問題であろう。
2頭の強い馬がいる場合は、どうしてもお互いにけん制しすぎてしまい、他馬に足元をすくわれてしまうことが多いのに対し、3頭の場合は他の2頭をマークするよりも、自分のリズムや型を守って走らせようという気持ちが強くなるため、それぞれが力を発揮して順当な結果に収まる。つまり、2強対決の場合は、レースの綾が生じやすいということを意味しているのである。
2強対決として、私の記憶に鮮明に焼き付いているのは、トウカイテイオーとメジロマックイーンが激突した1992年の天皇賞・春である。トウカイテイオーはデビューから日本ダービーまで無敗で駆け抜け、骨折による休養を経て、前走の産経大阪杯を持ったままで楽勝し、7戦7勝、負け知らずの戦績をひっさげてこの年の天皇賞・春に挑んできた。産経大阪杯で手綱を取った岡部幸雄騎手は、当時は辛口で知られていたにもかかわらず、「地の果てまで駆けていきそう」と手放しでトウカイテイオーを絶賛した。
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