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簡単には負けない脚の速い馬は最終コーナーで探せ

競馬のレースにおいて、最もスピードが出る場所は最終コーナーである。競馬ファンの多くは、競走馬は最後の直線に向いてから全力疾走をすると思いがちだが、実はそうではない。最後の直線では、各馬はスタミナが尽き、脚が残っていないために、我慢比べになっている。また、他馬を大きく離して勝つような馬は、最後の直線では手綱を緩められ、スピードを落として走っている。競走馬がトップスピードに乗るのは、余力が残っていて、ここからレースが動き始めるというその瞬間である。もちろんコース形態によっても異なるが、最終コーナーこそが、最もスピードが出る勝負所であることが多いのだ。

特に、中山競馬場のコースは、最後の直線距離が短いということもあり、最終コーナー手前から各馬が激しく動き始める。逃げた馬は最後の力を振り絞り、先行馬は虎視眈々と勝機をうかがい、差し馬は猛然と差を詰め、どの馬もトップスピードに乗って、迫力満点の攻防が演じられるのである。

私がこれまでに観てきた中で、最も速いスピードで最終コーナーを回ってきたのは、ラストランとなった有馬記念におけるディープインパクトであった。道中はいつも通り後方からレースを進め、最終コーナー手前から動き出したディープインパクトが、大外を回りながら全馬を一気に飲み込んでしまったあの最終コーナーのスピードは圧巻であった。カメラがついていけないほどの速さ。武豊騎手はディープインパクトのことを「脚の速い馬」と評したが、これほどにも速い脚を使える馬は世界中のどこを探してもいないだろう。そう思わせるほどの躍動感であった。あの最終コーナーにおける世界最速の脚は、今でも私の脳裏に焼き付いている。

何が凄いのかというと、

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