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ノーザンファームに始まり、ノーザンファームに終わりそうな2017年

この師走の時期になると、とある厩舎の忘年会における出来事を思い出す。かつてジョッキーとしてならした大御所とされる調教師が切り盛りするこの厩舎は、その年不振を極めていて、年間でひと桁の勝利数しか収めることができなかった。それでも、その調教師の人徳の賜物なのだろう、たくさんのジョッキーや関係者が集い、終始なごやかなムードで会は終盤を迎えた(ように私には思えた)。そして、最後に、社台グループの吉田照哉氏が壇上に登場し、締めの挨拶を行なった。

「社台グループはうまいことやっていると思われているようだけど、私たちにもいつどうなるか分からないという時期があった。それもつい最近まで」という前提から始まり、「だから今は、爪の先まで厩舎のためにという想いを持って、皆で頑張ってほしい」というエールが送られ、最後は恒例のジャンピング1本締めで会はお開きとなった。

誰もが思い思いにその場から離れようとしていると、とある馬主さんが助け舟を出そうと、「来年は社台の馬を4、5頭入れてくれるってよ、ねえ」と吉田照哉氏にけしかけた。吉田氏は他の人から話しかけられていて、聞いているのか聞いていないのか分からない様子であったが、当の調教師は「いやー、そんなに入れてもらっても馬房が一杯になっちゃうなあ」などと茶化すようなことしか言わない(照れ隠しだったのだろう)。傍から見ていても、じれったい空気が数秒続いたその時、ある女性がきっぱりとした声で調教師に告げた。

「頭をさげなさい!」

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