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KADOKAWA『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』を読んで感じた人間の普遍性。

アットホームチャンネルは登録者16万人を超える人気YouTubeだ。このチャンネルを運営しているのは、僕の母校である福岡県立田川高校の先輩であり、友人の兄でもある青柳貴哉さんだ。(以下、いつも呼ばせてもらうとおり「タカヤ君」と表記させてもらいます)

個人的な話になるが、学校の先生をしていた僕の祖母が亡くなった時、タカヤ君がお葬式に参列してくれた。僕は当時、小学校5年生で、タカヤ君は中学3年生だった。

その時、僕とタカヤ君は面識こそあったが、祖母のお葬式に参列してくれるような間柄では決してなかった。

数年後、タカヤ君に会った時に、参列してくれた理由を聞いた。

「先生は小学校1年生の時、担任をしてくれたんよ。先生に『タカヤ君は凄く面白いけど、メリハリがあったらもっと良いね』と言ってもらったのを覚えちょんよね。亡くなったっち聞いて、お参りに行きたいと思ったんよ」

タカヤ君はそう答えてくれた。タカヤ君にとって、祖母は記憶に残る先生だったようだ。そして、参列した時に、僕が先生の孫であることを知ったらしい。

何が言いたいかと言うと、タカヤ君は、人との「縁」を大切にしている人だと僕は思っている。幼い頃から、本能的に「縁」の大切さを知っていたのかもしれない。

話をもとに戻します。


ホームレスを取材するYouTube『アットホームチャンネル』

そんなタカヤ君がやっている『アットホームチャンネル』のおもしろさは、登録者数や動画についたコメントが物語っているので、ここでの説明は不要かと思う。本当にすごいチャンネルなので是非、観てみてほしい。

『アットホームチャンネル』より

そして、今回ご紹介する『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』はKADOKAWAから出版されたノンフィクション作品だ。僕は4月28日に田川市の明屋書店でこの本を購入した。

だが、積読してしまっていて、7月に入ってからようやく読み始めた。

そしたら、2日間で読み終わってしまった。

めちゃくちゃおもろかった。

Z世代のネオホームレスって?

Z世代とは「1990年代中盤から2010年代序盤までに生まれた世代」を指すそうだ。そして、この世代にはいろんな特徴があるらしい。その一つに、彼ら彼女らが、デジタルネイティブであることが挙げられる。

SNSでコミュニケーションする、調べる、人とつながる、何かを買うなど、あらゆる行動がスマホで完結する状況で育ってきた世代。

そして、日本が経済的にほとんど成長できず、世界的な影響力を失い続けたと言われている「失われた30年」を生きてきた世代であるとも言える。

この『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』は、Z世代に該当する年齢の人たちで、かつ、歌舞伎町の東横イン付近(通称:トー横界隈)に集まって、家に帰らない人たち(トー横キッズ)を取材したものだ。

示唆させない姿勢

「トー横キッズ」や「トー横界隈」という言葉は、よくネガティブな意味合いを含んで使われる。悪い言い方をすると「悪い子どもたちが集まる悪い場所」みたいな意味が、それらの言葉の後ろに漂っている。

しかし、この本は「良い」「悪い」の判断をせず、トー横界隈にいるZ世代の4人のホームレスたちを取材している。

読者に「良いことだよね」とか「悪いことだからどうにかしなきゃ」ということを示唆させない姿勢がタカヤくんの最大の魅力だ。

状況を正確に伝えることだけに注力した質問、姿勢、言葉。それらがあるからこそ、タカヤ君の人間味や出演するホームレスの人間性が浮き出てくる。

この本もまさにそうだった。

彼ら彼女らを通じて社会を見る

Z世代のネオホームレス。しかし、この世代の人たちが「特別に変わっている」わけではない。この本を読んで僕は、そう感じた。

おそらく、どの世代にも「Z世代のネオホームレス」のような人たちは存在したはずだ。

例えば、暴走族やガングロギャルなど、社会の間(はざま)で居場所を失った人たちが、自分の居場所を作り、そこに集まる現象は、いつの時代にもあった。

過酷な環境で育ってきた人たち、家出する子ども、お金を得るために身体を売ること、これらはいつの時代にも存在した。

ただ、社会の構造や環境が変化している。そして、年々、その変化は早くなっている。その早い変化の中で、また新たなネオホームレスが生まれていくような気がした。

つまり、この本は、ある意味で普遍的な人間の存在を描写していると言える。

そして、その対象となるZ世代のネオホームレスを通して、彼ら彼女らを取り巻く環境や状況を見ることで、今の社会がどんな社会なのかを知ることができる。

そして、それは、この本が「今の社会がどんな社会なのかを記録した本」であると言える。それだけで、ものすごく価値がある本なのではないか、それが僕がこの本を読んだ率直な感想だ。

以上、『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』を読んだ感想を書きました。是非、読んでみてください。

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