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マーティン・スコセッシ『アイリッシュマン』に漂うただならぬ哀愁。(パート2)

Netflixオリジナル映画『アイリッシュマン』のレビューを2回に渡り書いています。パート1はこちら。

裏社会の力がないと、成り上がれない厳しい世界

フランクは望んで裏社会に入りました。フランクはアイルランド系アメリカ人です。〜系というのは、おそらくアメリカで大きな意味を持っています。

当時のアメリカは、マフィアならイタリア系(シチリア系)でないと成功できない、というような〜系の力が凄く大きかったのだと思います。

それと、アイルランドからの移民は、ほかのヨーロッパからの移民より、移住の時期が遅く、先行利権を得た他の国々の移民よりも、危険な仕事や稼げない仕事に就く人が多かったようです。

シチリアからの移民も、アイルランド系アメリカ人と同様に他の国々の移民に比べて遅く、同じような境遇でした。

当時のアメリカは移住の時期によって、就ける職業が限られ、また、成り上がるための障壁が他の国々の移民よりも高かったのだと思います。

それでもフランクは家族のために頑張った。そして、最後は老人ホームへ

フランクの人生は哀愁が漂っています。裏社会のことや、殺人を肯定するつもりはありませんが、当時のアメリカの社会状況の中で、フランクの家族への想いが彼に殺人をさせたのだと思いました。

贅沢のためではなく、家族に豊かな生活を送ってもらうため、そして家族を守るためにマフィアの掟に従ってきたのです。

なんと『アイリッシュマン』は3時間半の長さ

結構、あらすじを書きましたが、マジで長い映画です。しかも、実話がベースらしいです。原作は『I heard you paint houses』という本です。

「私はあなたが家の壁を塗る仕事(殺し屋)をしてるって聞いたんだけど。」

血で壁を塗るのか、血で塗られた壁を隠すためにペンキを塗るのか、その辺は分かりませんが、いずれにせよ、殺し屋にこんなこと聞ける状況って、とても特殊ですよね。

実は、この映画、ずっと老人ホームで他の入居者と共に暮らすフランクが、昔のことを語る話なのです。

なので、ボケ老人が妄想の話をしているようにも見えます。これが、またフランクの哀愁を何倍にも増して表現しているように感じました。

にしても、ロバート・デ・ニーロは凄い俳優であるなあ、と改めて思いました。そして、スコセッシも、マジで偉大な監督であります。スコセッシは77歳だと書きましたが、デニーロも77歳だそう。(2020.8.19現在)スコセッシは今年78歳になるそうで、年は一つ上なんですね。

『タクシードライバー』もこの一つ歳の違うタッグで撮ったことを考えると、すげー感慨深いし、歳の近い仲間と何かを成し遂げるって、すげーかっこいいです。

めっちゃ長い映画ですが、その3時間半は決して無駄じゃないと思います。遠出する時なんかに電車や飛行機の中で観るにはマジでちょうどいいかもですねー。是非。

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