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創世記

1 楕円形の固形物が空から降り注ぎ大きな音を立てる、まるで隕石のように無数の白い楕円形が鉄とぶつかり合う音。静まった楕円形の海に嵐のような雨が降り注ぎ、白い楕円形の個体によって雨水はすぐに白く濁る。僕はそれをひとつひとつ押し込み、大きな渦を作る。渦の水は一度斜めに傾けられまた大きな鉄をはじく音とともに干からびる。雨、渦、干ばつは3回ほど繰り返された。そして最後に滝のような雨の嵐があり、白い楕円形は水の底に沈んだ。

2 次に、水と、そこに沈んだ白い楕円形で満たされた台地は電気が張り巡らされたさらに大きな白い空間に押し込められ閉じ込められる。上から暗闇がやってきて、白い空間は光一つない空間に代わる。夜だ。不思議なことにこの光一つない空間には電気が張り巡らされているというのだ、それは直観では信じがたいが、私たちの人体やそのほかいたるところにも電気が張り巡らされていることを考えれば、この暗闇の中が電気で満たされていることは納得がいく。

3 電気に満たされた真っ暗な夜に高音の振動が何度か鳴り響き、電気の流れが変わる。そして長い沈黙が流れた。長い暗闇と沈黙のなか、白い楕円形の台地は水の底から少しづつ水分を吸い込み、自らの養分にしていった。その側に流れていた電機エネルギーは熱エネルギーに変化し、この台地の上にたまっている水の温度は上昇し活火山のようにふつふつと音を立てては小さな爆発を繰り返した。それに伴い水をふくんだ楕円の台地はそれぞれに上に向かって広がっていった。暑い。台地が大きな変化を迎えている。僕はそう感じた。

4 それからしばらくたった。まだ熱帯夜は続いている。暑いし湿度も高い。もう待ちわびてしまった。いったい何年たったのだろうか。外の世界はおそらく、人類は滅び、もしかしたら地球も滅んでいるかもしれない。真っ暗な世界には大きく膨らんだ無数の白い楕円形とそれを見守る僕しかいない。楕円形たちも僕ももうこの世界に存在しないのではないかというほど、お互いの姿を見飽きてしまっていた。目を閉じても開けても暗闇の様子はほとんど変わらないため、目が本当に存在しているかどうか確認することももうできなくなってしまっていた。聞こえてくるのはこの暗黒空間から常に聞こえる蒸気の音だけだ。

5 そんなとき、『ピー』という高音が暗闇に響き渡り、天に光がさした。長い長い暗闇を突如切り裂いて現れた真っ白な光と音に、目も耳もくらんでふらついてしまう。

6 そして台地にはいつのまにか柔らかく、ほんのり甘くてなんとも温かい香りを放つ、真っ白な楕円形たち。それをしゃもじでよそって茶碗に盛り付け、箸を持って、座布団に座って食べた。やはりただの白米、最高にうまい。『ゆめぴりか』と『つや姫』が最近いいと思う。冷えた米も好き。

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