見出し画像

【書評】ふしぎの国のバード

イギリス人女性冒険家イザベラ・バードが著述した「日本奥地紀行」を原作とする佐々大河さんの漫画作品。
1878年(明治11年)という明治維新からまだ10年しか経っていない時期に、欧米人が既に踏破した奥州街道ではなく欧米人未踏の内陸ルートを、日本人の通訳兼従者、伊藤鶴吉と東京から函館まで旅した旅行記が漫画化されている。

佐々大河作 『ふしぎの国のバード』 KADOKAWA〈ビームコミックス〉、
全9巻(2015年5月15日~2022年2月14日に渡り刊行)

原作はイザベラ・バードがイギリスに住む妹に書き送った手紙を旅行記としてまとめた体裁になっており、本作品でも踏襲されている。
当初は無謀な旅であると周囲から言われるも、ジェームス・ヘボン宣教師やハリー・パークス公使らの協力を得て、日本政府から国内の無制限移動を許可した旅行免状を取り付けることに成功して旅を実現。
旅行の準備段階、伊藤鶴吉との出会い、東京から始まり日光から会津道を経て新潟へ抜け、日本海側を北上し、山形、秋田を経て函館に至る旅路をそれぞれの地域での出会いやエピソードを活き活きと描いている。

伊藤をめぐるプラントハンター、チャールズ・マリーズとの確執や、腐敗した井戸水を飲んで水あたりした人力車の車夫が、体調が悪いにも関わらず代わりの車夫を探してくるエピソードなど、原作では短い文章で書かれたエピソードを臨場感も持って漫画化するなど、漫画の強みを活かした読み応えのある作品だ。

原作同様、維新後間もない東北と北海道の風俗、文化や自然等を知ることがきる。
一部、原作にない記載もあるようだが。そのあたりは、原作と読み比べるのも一興かもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?