たかみ

文章を書く練習をしています。AIイラストを描いたり、本を読んだり、ドローンを飛ばしたり…

たかみ

文章を書く練習をしています。AIイラストを描いたり、本を読んだり、ドローンを飛ばしたり、動物を観察したり、植物を育てたりすることが好きです。会社員。元農家。

最近の記事

サトザクラ

 いつも歩いている道の桜がもう終わりかかっている。葉が急速に伸びてもう葉桜になっている木も多い。職場に近くに植えられているサトザクラはそれでもまだフリルが付いている。ソメイヨシノよりも遅くに咲き始めた代わりに、終わるのも遅いようだ。今年は特に暑いから、一気に咲いて散ってしまった桜が多かったのではないだろうか。気温が暑くなると私の意識も桜から離れてしまったようで、桜は花冷えするくらいの寒い春に似合う植物なのかもしれないなと思う春が終わった。  今日から5月。初夏が近づいてくる。

    • 歯科2

       今日も歯医者だった。  仕事終わり、5時半の鐘を聴くと同時に私は職場を飛び出していた。前回行ったのは4日前。あの時詰めてもらった仮の素材はもうない。左上の奥歯には大きな穴が空いていた。冷たいものが染みて痛いので、食後の痛み止めが手放せなくなっていた。  歯医者には先客がいた。ちょっとすると順番が回ってきて、早速治療台に移される。麻酔は苦く熱い。今日はドリルが使われた。少し焦げ臭い。歯のケラチンだかが焦げる匂いは痛みはなくとも不快だった。虫歯を放置した因果応報を感じながら、永

      • 読書メモ 「『働き方改革』の人類史」尾登雄平

         「働き方改革」という言葉が世の中に出たのはいつなのでしょう。首相官邸のHPを見ると2018年頃から民間企業の働き方の改革について当時の大臣が視察を行っているようです。ずいぶん昔から「働き方改革」という言葉は使われていたし、国として取り組んでいこうとしていたということなのだと知ると驚きです。この言葉と同じくらいの長さだけ社会人をしている私としては、働くのってずっと大変だなというのが率直な印象です。おそらく、好きなことをして生活に十分なだけのお金を稼ぎ不自由なく暮らすということ

        • 手触り

           撫でられることに対して快楽を感じる根拠はもうすでに科学で裏付けられているらしい。脳のある部分からオキシトシンというホルモンが分泌されて、そのホルモンの影響で安心を感じているらしい。そのホルモンには母乳を分泌しやすくする効果もあるらしく、お母さんの乳房に赤ちゃんが吸い付くとその接触によってオキシトシンが母の脳で分泌され、母乳が分泌されると同時に母親は満足するという仕組みらしい。  一方で、撫でる行為を行なっている側も快楽を感じていると考えられる。森を散歩しているときに撫でる樹

        サトザクラ

          こごみ

           「おじいちゃんの家でコゴミをとったからこれから持っていく」 と義理の弟から急にLINEが入った。金曜日の夕方、これから大型連休に入るその日だった。おととし就職して地元を離れ都会に行った彼は、ゴールデンウィークに入る一日前から休みをとって帰ってきていたようだ。わざわざ遠くの観光地に行くでもなく地元に帰ってきてくれるのが、出ていかなかった者としてはちょっとくすぐったい。私は大型連休を前に仕事は定時で済ませ帰宅した直後にLINEを確認した私は、「わかった」とだけ返事しておいた。

          歯科

           数ヶ月前、歯の一部がかけて取れた。左の上の奥歯だ。もともと欠けた歯とその隣の歯は歯並びが悪く、しょっちゅう野菜の繊維が詰まったり鶏肉が詰まったりしていたので、欠けてむしろそれがなくなってスッキリするなと楽天的に考えていた。  しかし、1週間くらい前からなんだか冷たいものを飲むと沁みるようになってきた。洗面台で歯磨きの時に水を飲むと鈍い痛みがある。気になってきたので歯医者に行くことにした。  ここで考えなければならないことがひとつ。今住んでいる街にはまだ1年と数ヶ月しか住んで

          ドクダミ

           車から降りると、駐車場の隅っこにドクダミが生えているのに気がついた。  ハート型の葉、血管のような色の葉脈、水に濡れて光っている。  昔は薬に使ったらしい。なんとなくわかるその匂い。裏路地の匂いはドクダミの匂い。じめっとした鼻につく匂いはなんとなく薬効がありそうだ。さくらももこさんがエッセイの中で、ドクダミは水虫に効く気がすると書いていたが私も同意する。某爽健美茶にもドクダミが入っていた。  なんだか凄そうな効能がいっぱいありそうで、歴史的にも薬として重宝されてきたであろう

          ドクダミ

          ブランコの精

           私が徒歩で通勤する道の途中に「三角公園」と呼ばれる公園がある。名前の通り三角形をしている敷地に集会所と公衆トイレが併設していて、滑り台やブランコや砂場がある。休みの日や夕方なんかは子供達が遊んでいる。  そんな公園を朝の通勤の時に通りかかると、結構な確率でブランコに乗った少女がいた。ブランコを漕ぎながらスマホをいじって下を向いている。ブランコはかなりの振れ幅で揺れていて、そんな中で鎖に腕を絡めてスマホを見ながら乗っているので体幹が強いななどと思いながら見ていた。器用だが少し

          ブランコの精

          柊の花は黄色い

           柊の花が黄色いということに今まで気が付かなかった。街路樹として植えられている柊。毎日視界の中に一度は入っているはずの柊。トゲトゲした硬い葉っぱが特徴的なその植物の花を見た記憶が私にはないと初めて気がついた。  桜やバラは反対だと思う。花が咲いているときにその植物の存在を強く意識する。今の時期に山を遠くから見ると、山のどこに山桜が生えているかが一目瞭然だ。彼らは花が咲いている時に自己の存在を強く主張している。ヒトは花を見るために集まり、花のもとで酒を飲んだりご飯を食べたりする

          柊の花は黄色い

          防衛本能

           昨年の世界の軍事費の支出が1988年以降で最高だったそうです。言わずもがなウクライナ戦争で実際に戦闘が行われていることが大きな要因でしょう。  どこにお金を使うかは、お金を媒体として生活を回している我々とは切ってもきれない関係にあります。ほとんどのものはお金を払えば手に入るこの世の中で、そんな万能の交換札を軍事に使うのは、使う必要があるからでしょう。  私たちが安心して仕事をして眠って勉強して…とできるのは、生命の危険がないからです。その状態を維持するためには最低限他から干

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          統計的な病と、個人のケース

           久しぶりに、レストランに父と行った。食事中に父から告げられた。母が重い病だと。今週の火曜日に詳細な結果がわかるらしいのでそれまでは内密にとのこと。近年の医療の進歩のおかげで、もうこの病は不治の病ではないと聞く。ただ本人は落ち込んでいるだろうか、痛いのだろうか。病のことを知った時はショックだったろう。火曜日までは素知らぬ顔をしているとしてその後、励ましてあげたい、応援してあげたい。  人の体は案外脆いものなのかも知れない。病とは無縁そうな母がまさか。父のカミングアウトを聞いた

          統計的な病と、個人のケース

          ループ

           今日、とある小説を読んでいて。その中に登場した老人がその人の半生を主人公の若者に語るというシーンを読みました。老人の生まれた村の話、幼少期に柿を食べて美味しかった話、召集令状が来た話、満州での経験、引き揚げ、日本に帰ってきて始めた印刷屋の話…。人生は長い話なのだと3割くらいは目が滑りながら、違うことを考えながら読んでいました。自分に置き換えたらどうなのだろうと。自分のこれまでの人生を言葉にして語るならばどんなストーリーになるのだろう。私もそこそこの時間を生きてきたヒトの1個

          クチコミ

           最近、インターネットに書かれたクチコミや偽の情報に傷つけられたり、なんとかしろと怒ったり、そんなあれこれやりとりをよく見かける。インターネットってのは街の裏路地みたいなもので、その隅っこでつぶやいても誰も見ていないだろうと思っていた。アンダーグラウンドを楽しんでいた時代ははるか昔になってしまった。どんな場所も日で照らされて、何をしてもバレてしまう。どんなところで何をしていても神様に監視されているみたいだ。  もともと人には、何か汚いことを言いたいだとか、誰かを蔑みたいだとか

          ボケ

           ボケとかクズとか呼ばれる植物があります。昔はなんて名前なのだろうと思ったものです。  今日、帰り道にボケの花が咲いているのを見かけて、そんな昔思ったことを想起しました。灰色っぽい樹皮とは対照的な真っ赤な花が、枝のあちこちで咲きます。カリンと同じツルツルの樹皮。触ると棘があるのはバラの特徴です。  瓜のような実がなる木なので木瓜(もけ)。それがいつの間にやらボケの音に変化してしまったそうです。  暑い日が続くこの頃。あまりにも暑いと花は一気に咲いてしまうので寿命が短くなりま

          正義

           椎名林檎さんの新曲「人間として」がリリースされたので、仕事の帰り道で聴きました。  正義ってなんだ。猫や犬や魚や草花に正義という概念はないでしょう。多分。どんなに多くの事件を解決に導いている警察犬でも、「一般市民の生活の安全のために」という確固たる正義を持って捜査に取り組んでいるわけではないでしょう。訓練で厳しく躾けられたり、美味しいご褒美をもらう経験をした結果、人に嗅がされた犯人の匂いを覚え、それを辿っていき、その匂いが強いところで伏せるという行動をすることが彼らにとっ

          フルマラソン

           フルマラソンの市民大会は私の地元にもある。毎年数万人が参加して、その日は道も通行止めで、地域がそのマラソン大会のために協力している。なんだか昔のお祭りってこんな感じだったんだろうなと思わされる。  そのフルマラソンが各地で参加者の定員割れを起こして続行が危うくなっているという。ブームは必ず去るというが、このマラソン大会もそうなのだろうか。私の家族も父や弟が参加するので完全に他人事ではない。自分自身は特にランニングなどもしないので、縁のない話だが。  こういったイベントをする

          フルマラソン