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 ハワイで不倫する日本人

語学学校の学生は、短期滞在者と長期滞在者に分けられる。
 
私の通った午前のクラスには、長期滞在者である古株の4人がいて、いつもうるさくしゃべっている金髪の若者の他に、天然パーマの頭髪と髭が白髪交じりの、日焼けした陽気な50代後半くらいの男性、
日本食レストランのオーナーだという50代前半くらいの小太りの男性、いつも彼の隣にいる背の高い30代後半くらいの元CAの女性がいた。

その4人は顔見知りでクラスに慣れている感じだったが、レストランオーナーと元CAの二人以外は個人的に親しい訳でもなく、クラスの中で話す程度で、それ以外は距離を置いているようだ。

元CAの女性は、レストランオーナーの友人の妻だという。

彼女の夫は仕事で日本にいるのだと話していた。

いつも一緒にいる二人は昔からの友人なのだろうと思っていた。

しかし、ある日の朝、クラスへ向かっていた私は、エレベーターの中で二人が手をつないでいるところを見てしまった。



私が近づくのに気づいて、二人は左右にさっと離れた。

私は平静を装い、笑顔で「おはようございます」と言った。

エレベーターが動き出すと、レストランオーナーはわざとらしく、

「いやあ、変な関係だと思われちゃったかな。」

「全然そんなことないよね。ははは。」と言った。

元CAも笑いながら「ないない。ただの友達。」と言いながら顔の前で右手を横に振った。

私は一応笑顔でうなずいて見せたが、嫌な気分になった。

「心配しなくても誰にも言いませんよ」と言いたいが、

わざわざそう言うのも変だし、余計に面倒なことになるので黙っていた。

ハワイの日本人コミュニティは狭そうだから、不倫が誰かにバレたらすぐに噂が広まるのだろう。


彼らはきっと裕福で、恋愛中なのだろうが、あまり幸せそうには見えなかった。


これはハワイの長期滞在者の多くにに共通していることかもしれないが、

日本にいるときのような緊張感がなく、退屈しているのだ。


きっと日本にいた時は、二人とも美男美女で颯爽としていたのだろう、

でも今はもう若くもなく、ハワイで弛緩した生活をしているのだろう、となんとなく想像してしまう。


リラックスできる優雅な生活は満たされるはずなのに、

こそこそしているからかもしれないが、彼らには恵まれた者の余裕が感じられず、幼稚で安っぽい匂いがするのだ。

しかも、恋愛をしているなら人生に張り合いを感じるものだろうと思うのだが、

倦んだようにくすんだ彼らの瞳には、光が全く見えなかった。



恋をしているとき、人は自然と輝き、魅力を放つものだ。

私も経験があるが、好きな人ができると、エネルギーに溢れ、余分な脂肪が落ちて自然に体も引き締まってくる。


でも彼らには、本当に欲しいものを諦め、とりあえず目の前にあるもので済ませているような、妥協と倦怠の雰囲気を感じる。


歳を取ると、心に炎を持つことが難しくなるのかもしれない。


南の島の、けだるく緩んだ空気の中では、伸びきったゴムのように意欲や情熱まで希薄されてしまうのだろう。


私はまた恋をすることがあるだろうか?


全く楽しそうではない不倫カップルを見て、さらに恋愛への興味を失ったように思う。

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