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Web制作における制作費の未払い問題。その時、制作費を回収するためにどう交渉したのか?

Web制作界隈でよくあるトラブルのひとつに制作費の未払いがあります。

・納品が完了していないと言ってなかなか請求させてくれない。
・納品後に、品質や制作進行に難癖をつけて満額を支払おうとしない。
・請求書を送ってもなかなか入金してくれない。

特にフリーランスの方で、SNSでこういったことを嘆いておられる方を見かけます。

こういう嘆きをみて、「そんなのきちんと契約を結んでいなからだ!」「払ってもらえないなら弁護士に相談すればいいだろ!」というご意見もごもっともなのですが、これが実際に契約をきちんと結んでいても難癖をつけられることはあるのです。

特に小さなWeb制作会社やフリーランスの方だと、バックに法務部門など詳しい専門家が付いているわけでもないし、バックボーンは薄いだろうみたいな感じでなめられがちなんですね。

ただ、払わないことは良くないことですが、発注側にも主張があることは分かります。

制作の仕事は最初から品物があるわけではないので、思った通りの成果物が納品されない、進行が悪すぎて納品が間に合わなかった、など制作費を支払う側にとって、とても満額支払う気になれないようなこともあるでしょう。

発注者側の気持ちや事情もよく分かるのですが、制作会社としても「作ってみて納得できないからお金は払いません」は困ります。

では支払ってもらえないからすぐに弁護士に相談する、という手段を取れるでしょうか?

弁護士に依頼するのは、小さなWeb制作会社やフリーランスのにはハードルが高い。

後述しますが、私の経験上、制作費の未払いで一度だけ、弁護士に相談したことがあります。

弁護士に相談すればあとはお任せ、制作費は満額回収できる、というイメージの方もいらっしゃるかもしれませんが、依頼したからと言って、何もしなくて良いわけではありません。

相談するにしても、未払いにいたるまでの経緯や先方とのやり取りを、過去のメールやドキュメントなどを遡って、すべて説明する資料をまとめないといけません。

資料をまとめるうえで、実際に制作を担当したスタッフに口頭でのやり取りなどをヒアリングする必要もありますし、とにかく関わった人すべての経緯を、時系列ですべて追って、言質ややりとりの痕跡をまとめる必要があるのです。

時には弁護士事務所に赴いて経緯を説明しなければなりません。

小さなWeb制作会社やフリーランスが、実務の合間にこれをやるのはかなりしんどいです。特に私の場合は、創業間もなく社員を増員してすぐにトラブルに見舞われたのでかなり大変でした。

途中で面倒臭くなってお金はいいからなかったことにしてほしい、という気分にもなりました。
そのくらい時間が割かれるわりには、満額の制作費を回収できる保証はありません。弁護士費用もこちらの時間も取られます。

よく裁判だとか訴訟だとか簡単に口に出す人がいますが、実際にやってみると、回収する費用に見合ったものなのか分からなくなってきます。
訴訟や裁判というのは、費用と時間をかけてでも、主張しなければならない事、守らなければならない事がある人がやることなのではないかと思います。

制作ビジネスにおいては、気を付けて進行していればそんなことにはならない、ということも多いです。

法的手段に出れば、そのクライアントはおそらくそれっきりになりますし、うまく収められるのであれば、法的手段は使わないに越したことはありません。
私は実際に経験してみて本当にそう思いました。

では、実際に法的手段はとらずに、きちんと制作費を回収するにはどうしたら良いか?

この記事では、実際に私が経験した制作費の支払いに関してのトラブルとその時どういう交渉をして費用を回収したのか?また、未払いなどのトラブルに遭遇しないために事前に気を付けていることについてまとめてみました。

実際に自分が直面した経験とその時に取った対応です。

ですので、対応に至らぬ点もあるかと思いますが、同じようなことに遭遇してしまった、現在トラブルを抱えている方の一助になればと思い、書いてみました。

途中から有料となりますが、体験談として興味を持っていただいた方に読んでいただければと思います。

ビジネスマッチングサービスで受注した案件で音沙汰がなくなった。

今はサービスを閉鎖していますが、楽天ビジネスというお仕事マッチングサービスがありました。今だとクラウドソーシングサービスに類似するサービスです。

創業当時は仕事も売上もないので、こういったサービスを「藁をも掴む思い」で使い、必死に見積もりや提案を出し続けていました。

この手のお仕事マッチングサービスは実際に利用してみると、「見積りだけ欲しい」「提案だけを聞きたい」という目的の方も多く、案件に対して提案や見積りをしても、情報を集めている段階だなどと言われ、案件が成立することがほとんどありませんでした。

Web制作の一括見積サービスのような感覚で利用している方も多かったと思います。

その中でやっと受注した1件の案件。
PCの修理をしている会社のWebサイト制作の案件でした。

小規模なサイトでしたが、正式に受注することができ、当時のディレクターが要望などをヒアリングに出向き、デザイン案の制作までを進めることになりました。

そしてデザインを制作、提出して1週間。
特になんの音沙汰もなく、デザインについて修正や要望があるのか連絡しても「業務が忙しい」とのことでなかなか確認していただけない。

その後も1週間に一回くらいは連絡していたのですが、ついには返信すらこなくなってしまいました。
いつ頃の公開で進めれば良いのか?コーディングに移ってしまっても良いのか?まったく連絡が付かないまま1ヶ月以上が過ぎました。

その後、他の案件の対応もあったので、しばらく放置していたのですが、先方からも連絡はない状況は続き、いよいよ案件がなかったことになる、ということが頭をよぎり、デザイン制作した部分まで精算したい旨、連絡しました。

しかし、これにも返信がない。
電話も出ない。

最終的にはメールで一歩的に、デザイン制作で動いた部分の費用のみを提示、請求書を発行させていただく旨連絡した後に、請求書を郵送しました。
期限内の入金されなかったら、どうしてやろうかと思っていたのですが、請求書を送ったことで入金だけはしていただけました。

サイト公開まではいきませんでしたが、デザイン制作を進めた分については無事に費用を回収することができました。

あまりに動きのない案件については、返信がなくとも諦めずに連絡を取り続け、あまりに放置されるようでしたら、強制的にでも精算する方向で進めてしまうのも、ひとつの手だと思います。

連絡が取れなければ、なかった話にしてしまう、揉める時間がもったいない、と考える方もいらっしゃると思います。
私も制作会社の一社員であれば、自分の給料が減るわけでもないし揉めるのも面倒なので、諦めていたかもしれません。

しかし、正式に受注して制作を進めたのであれば、その金額がいくらであっても、人が動いた分はきちんと支払っていただく、この姿勢を持つことは大切です。

特に制作ビジネスで独立起業する方、フリーランスとして食べていきたい方は、時間がかかっても、きっちりと費用は回収する、というマインドを持つべきだと思います。

制作をビジネスにしたいのであれば、お金から逃げないことです。

サイト公開後に対応や品質にクレームを付けて、制作費の値引きをしないと支払わいはできないと言われた。

Webサービスを運用するために立ち上げたばかりの会社の仕事を請け負って、サービスローンチ後、請求の段階になって、品質や制作進行に不満があったなどとして、請求金額の値引きを求められたことがあります。

この時は、先方も請求金額に納得できるまでは支払わない、ということで一貫した姿勢で、深夜10時以降に私の個人携帯に電話をしてきたり、かなり悪質な交渉をされました。

私が先方の主張する瑕疵を認めるまで、何度も何度も同じ話を、わざわざ営業時間終了後、深夜に渡ってまで個人に向けて連絡をしてくるのです。

さすがにこれにはまいってしまい、自分だけの手には負えないので、オーナー社長に連絡し、弁護士に相談することにしました。

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