青色のワンピース

あなたのやわらかな黒髪には
青色のワンピースがきっと似合うわ
いつか行った美術館の絵画の青色
あの色のワンピースがあったら私、きっと買うわ
海にも空にも溶けてしまわない青がいい
あの絵画にだけ溶けられるような青がいい
あなたはスカートをふわりと舞わせて
飛び去るように行ってしまうのね
海の中でも空の中でも
私、必ずあなたを見つけるわ
そして地上に戻るの
あなたとならどこまでも飛んでゆけるわ、私
絵画の中にだって

やわらかな黒髪を風になびかせて
あなたはいつでも笑っているの
そんな写真ばかりだわ
そんなあなたばかり知っているわけじゃないのに
今でも私、はっきりと思い出せるの
あなたは怒ると怖かった
涙もろいくせに泣ける映画ばかり見て
いっつも言うの、
「本当に泣くべき時には枯れてしまっているかも」って
涙はとっておけるようなものじゃないっていうのに
どんな顔のあなたも素敵よ
だから残っていないのが残念
カメラを向けた途端にあなたが笑ってしまうからよ
幸せな悩みね、これって
今でもあなたは笑っているかしら
きっと笑っているのでしょうね
青色のワンピースを着て、風の中で
ようやっと自由になった体で、
飛び回っているのでしょうね
あなたは風になったの?それとも、鳥になったの?
──あなたはあなたね、おかしなことを聞いたわ
あなたの黒髪がやわらかく、風の中でなびいている
目を閉じると浮かんでくるのよ、そんな姿が
だから大丈夫ね
きっとまた会えるわ、私たち

あなたのやわらかな黒髪には
青色のワンピースがきっと似合うわ
真っ赤な火の向こうで
私、生まれて初めて見るのよ
海に溶けないその青を
空に溶けないその青を
風ににじませて笑う、
夏の姿をしたあなたのことを


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