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一人聞く雨音

耳を当てて聞いたんだ、雨音を
雨粒はたしかに歌っていたよ
賛美歌ではなかったけれど
雨粒はたしかに歌っていたよ
単音を連ねて歌っていたよ

目をつむって聞いたんだ、雨音を
雨粒はたしかに笑っていたよ
快活ではなかったけれど
雨粒はたしかに笑っていたよ
空気を抱いて笑っていたよ

夢を旅して聞いたんだ、雨音を
雨粒は見えなかったよ
けれど笑んで歌っていたよ
そんな声がした
声だった、声だったんだ

目が覚めると光がいたんだ
水たまりは輝いていたよ
子供がそこに飛び込んだんだ
私はたしかに聞いたよ
重なるふたつの笑い声を

水滴が光になって小さな音をたてる
落ちた先には陽が写っている
君はもう雨粒ではないのだから
きっと空の天道にも会えるだろう
旅立ってみるといいよ
夢にいるよりずっと良いはずだから
君はもうどこにだって行ける
空をごらんよ
いい天気だろう
君の旅立ちにふさわしい朝だ
だからもう行くといい
水よ、どうか良い旅を

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