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「複業×地方創生」で拓く焼酎の未来 参加者の思い

 地方の企業が人手不足やアイデア不足を補おうと、「複業」を活用する試みが始まりました。鹿児島県伊佐市の焼酎メーカー、大口酒造が大都市で働くビジネスパーソンを期間限定のアドバイザーとして招き、焼酎の消費拡大策を考えてもらうプロジェクトです。なぜ仕事を持ちながら地方企業のマーケティング支援という今回のプロジェクトに加わろうと思ったのか。メンバーそれぞれの思いを聞きました。

© super_murachan

「パラレルワークで焼酎の未来を創造する 大口酒造プロジェクト」は8月24日に1回目の現地ワークショップを開きました。 30人の応募者から選ばれた20~40歳代の男女7人の経歴は多彩です。

■川股 美都里氏(建設業)

説明会に参加した理由は鹿児島が好きなんです。ひとつの理由は友人がいるという。30歳を過ぎてから知った友達です。この友人のおかげもあり、風土もあっていました。5年前から年に2、3回来ていました。お酒飲むのも好きだし、鹿児島好きだしという理由で応募しました。

(説明会で)選考されるとも知らなくて、「みなさんこんなに興味あるんだ」って俯瞰してみていました。参加させていただけるようになってから副業やパラレルワークを知りました。今までずっと会社員人生だったので会社以外の世界も見てみたかったです。

地方のことに興味があります。今年かかわっているのが西会津や福井県です。地方との関係性をいろんなところで作りたいと思っています。複業という視点をさらに刺激にしていきたいです。

■小助川 将氏(教育サービス業)

今は違う部署なんですけど会社で人事の責任者をやっていました。2000人いる会社です。その人の可能性を最大限に生かそうと考えたんですけど、やっぱり会社の事業モデルによって活躍する人材の定義って変わってくるんですよね。会社という枠組みの中では一人一人の可能性を最大限生かすことって難しい、って思いました。「本当はこの人、すごいいろんなところにアクティブに動いていくのが成果につながりやすいのに」と思っても、そういう場所に空きがなかったりします。本来、その人の興味や関心、強みという一人ひとりの立場になったら、1つの会社で縛るって社会の損失じゃないですか。

自分も結果が出せない案件があり、「俺って実力なかったのかな」と悩んだこともあります。そういう自分の持っている過去の経験がほかで生きるのか、確認したかった。人って個人のスキルや特性もあると思いますけど、そこに置かれた環境によって発揮できるか、できないかが変わると思っています。それを検証したいです。

■関口 伸之氏(人材サービス業)

スキルを身につけたかったです。普通の仕事での成長感はちゃんと感じていますが、それでは身につかない経営やマーケティングといったものを身につけたかったです。多くのビジネス講座にお金を払って勉強してきました。でも、仕事で試せる機会がないんです。「インプットしたことをアウトプットするクセをつけないと何にもならないなあ」と感じていました。

これからはアウトプットのトレーニングをしていこうと思っています。自分の今の仕事だけじゃなかなかできない。今回のプロジェクトのマーケティングの仕事に関わるのに興味を持ちました。自分の知識を試せるのに加え、好きな地方創生やお酒が入っているので応募しました。30歳を過ぎて「外で身につけなきゃな」と感じていたタイミングでもありました。

■塚原 亜希子氏(総合情報業)

私は会社の社風もあって、複業という意識がないんです。どっからが本業、どっからが複業ということもあまり考えていません。正直、複業しているとも思っていません。会社も副業や複業を推進しています。どっちかというと複業という言葉よりも自分の興味があるものが仕事だったというだけです。

今回のプロジェクトは今の業務にもなにかしら生きるし、幅が出る。逆に、後からやりたいものが「お仕事ですよ、複業ですよ」と言われたのでスイッチが入りました。

■冨永 咲氏(PRコンサルタント、2代目ミス薩摩焼酎)

鹿児島県出身で地元に貢献したかったのが理由です。神奈川県で就職して、出てはじめて鹿児島のよさが分かっり、いずれは地元に貢献したいと思っていました。社会人4年目のときにミス薩摩焼酎に応募したら、選ばれました。これをきっかけに仕事をやめて鹿児島の焼酎にかかわってきました。

1年間、ミスとして活動してきましたが、深く蔵元にかかわったり、潜在的な顧客層にアプローチしたりすることができませんでした。せっかく焼酎にかかわったので深いところまでやってみたいと思っていました。

本業でPRやプロモ関係の仕事をしています。今やっている経験も生かせ、鹿児島の蔵元に深くかかわれるチャンスだと思いました。表面的なPRじゃなくて、お客さんが何を求めているのか、いろんなメンバーのバッググランドも多様なのでいろんな面から考えてアプローチできる。個人的にもうれしいなあと思います。

■藤原 佳奈氏(演劇家)

演劇の仕事をやっています。それだけじゃ食べていけないので執筆活動もしています。最近、知り合いの企業の人に「イベントやりたいんだけど相談に乗って」とか言われた相談に乗っていました。

お茶のイベント会場の空間デザインのアイデアを考えたこともあります。狭い空間に白衣を着ている人がいる茶室です。そんな緊張する空間に入っていくには、まずモードを変えなくちゃいけない。「茶室に入るまでの空間でモードを切り替える演出をしたら」などの提案をして採用していただきました。

その後も企業のワークショップやイベントの相談の話が来ました。自分の体感と、演劇のときに使う「言葉の脳」が案外需要があるかもしれない、と思いました。今回の募集には「複業でいいの?」「しかもお酒飲めるの?」と飛びつきました。ビジネスにも役立ちそうです。

■若宮 和男氏(uni'queCEO、ランサーズタレント社員)

私が経営する会社はそもそも複業をしていない人は入れません。複業を推進したいと思っているのは女性が活躍できるようになってほしいという思いからです。以前、勤めていた会社だと、女性が出産すると産休やその後の時短勤務などで職場内で肩身が狭っていた様子だった。その人たちはママ業でがんばっていて会社でもちゃんと仕事しているじゃないですか。

うちの会社はママ業、学業も複業です。一つの企業に100%時間を注いだ人が偉い、という考えがおかしい。いっぱい時間を注いだ人が偉いとなったら、体力的にも女性より男性が偉いってなっちゃうじゅやないですか。でもママやっているときの社会貢献も見逃せない。いろんなところでちょっとずつでも社会に貢献しているのが偉いよ、というのを推進したい。副業、複業はどんどん当たり前になっていきます。                     

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1回目のルポを日経電子版で掲載しています。

‪www.nikkei.com/article/DGXMZO34637040X20C18A8000000/‬

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34637040X20C18A8000000/?n_cid=DSTPCS001

プロジェクトは今後、テレビ会議やメールによるやりとり、市場調査を重ね、10月半ばに大口酒造の幹部への消費拡大策のプレゼンテーションで終了する予定です。

COMEMOではこのプロジェクトも含め、地方創生関連の話題を追跡していきます。

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