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牛肉「輸入安・和牛高」の構図とは

BSテレ東の朝の情報番組、日経モーニングプラスの「値段の方程式」、今朝のテーマは牛肉でした。昨年の12月にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が発効され、関税の引き下げで値段が安くなったのが話題です。
日本で食べられている牛肉のうち6割が輸入です。輸入先はオーストラリアと米国が大部分を占めています。次いでカナダ産です。一番身近な牛肉の値段というのは輸入牛肉の値段ということになります。

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ではTPP発効でどのくらい安くなったんでしょうか。輸入先の上位三か国で絞るとこうなります。

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豪州は2015年1月に発効した日豪EPA(経済連携協定)で先行して下がっていました。TPP発効に伴い豪州、カナダとも26.6%に下がりました。米国はTPPに参加していないので変わっていません。TPP発効で関税は段階的に引き下げられていきます。16年後には豪州、カナダとも9%まで下がります。関税だけでみると、ますます輸入牛肉が値下がりしそうです。

キャスターの豊嶋広さんから「カナダ産の牛肉はあまり見かけない、どこで食べられているんですか」と質問されました。中堅スーパーで扱いが増え始めています。「いきなりステーキ」を運営するペッパーフードサービスも導入を検討しています。カナダ産は米国と同じく穀物をエサにして育てているので肉質も似ており、値下がりでこれから扱うところが増えそうです。

値段の方程式はこうなります。
牛肉の値段は輸入牛肉の関税の動向に左右される

では国産の牛肉価格はどうなっているのでしょうか。じつは国産牛肉は輸入牛肉とは対照的に高値が続いています。
背景には、和牛の高騰があります。ここでキャスターの八木ひとみさんから「ちょっとよくわからないんですけど、和牛と国産牛って違うものなんですが」と聞かれました。
そうなんです。全然違うものなんです。「和牛」というのは黒毛和種(くろげわしゅ)、褐毛和種(あかげわしゅ)、日本短角種(にほんたんかくしゅ)、無角和種(むかくわしゅ)。この4種類、もしくはこの4種類の中で掛け合わせたものを和牛と呼びます。

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黒毛和種が黒毛和牛と呼ばれるもので、和牛全体の9割を占める主力です。それ以外の牛で、日本で育った期間が長いものは国産牛と呼びます。
和牛は高齢化による離農や後継者不足により、子牛を生産する国内の生産者が大幅に減少したため、価格が上昇しています。他の国産牛も高値が続いているのは、高価な和牛の代替品として需要が拡大しているためです。

もう一つ高値の理由として外国人から人気だということが挙げられます。高級ステーキ店などの客は、どんどん外国人の割合が増えています。訪日外国人客が日本に来る、目的の一つになっている。
関税が下がっていて輸入牛肉の値段は下がっています。日本人は輸入牛肉をたくさん食べるようになりそうですが、一方で、日本で生産している「和牛」の値段は高騰し食べるのは主に外国人という状況です。

和牛が海外から注目されているということで、最近こんな事件もありました。

「この記事をみて思ったんですが、そもそも受精卵って輸出してはいけないんですか」とキャスターの天明麻衣子さんが尋ねました。もちろん、ダメです。和牛は畜産農家が長年品種改良を重ねた結果、肉質が向上しました。高級ブランド品として海外で人気が高く、輸出量も年々増加してきました。もし、受精卵や精液といった「遺伝資源」が流出すれば、海外でも大量の「和牛」の生産ができるようになります。工業製品で例えると、製造に必要な特許が流出し、広く使われるようになるのと同じこと。ブランドの命である遺伝資源の流出防止が重要課題になっています。
天明さんは海外で「WAGYU」をみたことがあるそうです。1990年代に受精卵が大量に持ち出された。特に大規模にやっているのは豪州や米国。日本の和牛は先ほど紹介した4種類の牛の血統を引き継いだものだけですが、海外の場合はその割合が50%以上ならOKというルールになっています。日本の「和牛」とはちょっと違う、アルファベットで書く「WAGYU」が別の品種として一般的なものになっている。しかも、日本とは比べ物にならない規模で輸出もされていて、世界のスタンダードはアルファベットの「WAGYU」になりつつあります。なんか、いびつな構図ですね。



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