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世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。今日のテーマは「缶コーヒー「一物二価」の謎 希望価格上げで解消なるか』。缶コーヒーは大手メーカーが5月出荷分から希望小売価格を引き上げています。人気商品のサントリーの「ボス」やアサヒの「ワンダ」は1998年以来、実に25年ぶりの値上げとなります。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

大阪万博で人気集める

そもそも缶コーヒーは世界で初めて、日本で開発された商品です。現在のUCC上島コーヒーが開発しましたが、最初のうちは、売り上げがなかなか伸びなかったそうです。全国的に知られるきっかけとなったのが、1970年の大阪万博。海外の全てのパビリオンで販売してPRした結果、入場者の人気を集めました。そこから全国に知れ渡るようになり、販売数も爆発的に伸びていきました。

値上げ幅は最大20%以上

大手各社の値上げ状況です。上げ幅で多いのが25円。値上げ幅としては20%以上になります。2021年以降の一連の食品値上げの中でも、かなり大きいです。値上げも食品・飲料で最後発となります。これまで価格を抑えてきましたが、もはや我慢の限界ということでしょう。
コーヒー豆の値段が上がっているのが値上げ理由です。主要輸出国2カ国で生産が減少しています。1位のブラジルは大雨、2位のベトナムでは肥料価格の高騰の影響や農園売却の動きなどがあり生産が減少しています。包装資材費やエネルギー費などのコスト負担の増加もありました。

自販機価格はまだ動かず

実際に街中の自販機を調べました。

こちらは5月8日の東京都内の自動販売機の写真です。100円や120円という値段ですね。これまで通りの値段で発売されています。自販機飲料の場合、鉄道会社の値上げと違って一斉に価格表示が切り変わるというものではないからです。
一方、スーパーの店頭ではどうでしょうか。日経POS情報のデータを見てみます。4月のデータでは各社の人気商品の値上げ前のメーカー希望小売価格は115円なのに対し、実売価格は63.6〜71.9円。

ほぼ希望小売価格で売っている自販機とは大きく乖離しています。缶コーヒーには2つの値段が付いてしまっている状態だということですね。飲料自販機はメーカーが直接設置しているものが多く、流通を介さずに価格もコントロールできます。そのため、販売価格を高く設定できますが、スーパーではそうはいかないのです。単価が高い自販機での販売はメーカーにとって重要な収益源です。メーカー独自のアプリを自販機と連動させ、何本か購入すると1本無料でもらえるといった特典を設けているメーカーもあります。

コンビニコーヒーとの競争も睨む

自販機コーヒーにはライバルもいます。コンビニのコーヒーです。店頭で淹れたれのコーヒーが飲めるコンビニコーヒーは2000年ごろから登場、値段の安さとおいしさから人気商品になりました。レギュラーサイズで100円からという価格設定です。

自販機コーヒーは今回の各社の値上げをそのまま反映すれば、税込の販売価格は150〜160円になります。コンビニコーヒーより割高感が強まってしまいます。飲料メーカーとしては今回の値上げでまずスーパーの実売価格を引き上げたいというが本音ではないでしょうか。自販機の値段が上がってくるのはその後の話になるとみています。

「一物二価」は珍しくない

自販機と店頭価格という目にみえる「一物二価」ですが、食品ではメーカー希望小売価格と実際の販売価格の乖離がある、見えない一物二価は珍しくらしくありません。2021年以降、食用油やマヨネーズは数回にわたり出荷価格を引き上げました。いずれも2割以上、値上がりしましたが、メーカー希望小売価格と実勢価格の差は2倍ほどある品目もあります。




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