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愛情

先日、秘密基地をSNS上に作ったという話をしました。
アトリエの卒業生や親御さん、
美大の友人らと何か楽しいことが出来れば嬉しいと思ったのです。
何より彼らの存在に触れるだけで癒される。
ところがSNSの整備が整わない。
グループに招待するのも自己紹介をどこにすれば良いのかも、
いちいち四苦八苦していました。

一人の子が見かねてメールをくれました。「いつでも出張しますよ。」
渡りに船と、即座に返信をしたのです。
「助かります。よろしくお願いします。」
今夜は二人でやってきて、情報のインフラ整備をしてくれました。
これで秘密基地に集まってくださった方にも、
スムーズにチャレンジの報告ができます。
一人の子はアトリエに足を運ぶのは10年ぶりだと言いました。

そんなに会っていない訳はないと驚いたのですが、
考えてみると展覧会の度に自腹で帰郷し手伝っていてくれたからでした。
東京で研修旅行がある時にも参加して、
小さな子達の面倒を見てくれたのです。
彼は昔“一緒にベネチアを歩きたいね”と
約束をしたのを覚えてくれていました。
また一つ叶えたい夢が増えました。
もう一人の子も付かず離れず私の世話をしてくれています。
横に座るだけで、私が何に困っているのかすぐに伝わるのです。

彼女は3歳から高校を卒業するまで15年間通ってくれました。
高校生になるとパソコンを抱え自転車で。
片道1時間以上もかかる電車通学の高校。
帰宅すればのんびりしたいであろう冬も、
凍えながら笑顔でアトリエのドアを開けてくれるのです。
雪がチラつく厳寒の夜道をチャリで帰っていきます。
心配で後ろからライトで照らしながら伴走して家まで見送りました。

二人とも平日の仕事の後で、
手伝いに駆け付けてくれているのです。
私の“ただ一緒に遊びたい”という無邪気な希望を、
叶えてあげようと手伝ってくれるために。
何かにつけ一人前にできない私には、
そんな人たちがたくさんいます。
本当に幸せなことでサポートが多すぎて、
どっちにも足を向けられないなぁなどと思いながら眠ります。

結局帰宅してからもフォローを続け、
2時間近くかかって必要なことを全てやり終えてくれました。
「本当にありがとうございました。」とメッセージを送ると、
「いえいえ、全然大丈夫です。また何かあれば言って下さい。」と女の子。
「何かあれば、平日の夜は比較的空いているのでいつでも。」と男の子。
気持ちがほっこりして和みます。

こんな風にアトリエの卒業生や親御さんたちは、
私をフォローしてくれることに労を惜しまないのです。
片付けが苦手なことは見ていてわかります。
そうすると、授業の終わりに世間話をしながら、
そこここのゴミを確認してから片付けてくれ、
遠慮がちに散らばっているものをまとめてくださいます。

整理整頓が出来ないのにも関わらず、
自分のテリトリーに入って来られることを
好きではないと知って下さっているので、
決して私のペースを乱すようなことはしません。
どんなマイナス要因にも否定的ではなく、
好意と愛を伝える態度を崩されないのです。

思いつきで繰り出すイベントも、
日付が間違っていることがあるから確認をして訂正してくれます。
言われたことも次の瞬間忘れてしまうことがあるので、
口頭で連絡をくださった上で、当日確認のメールをくれます。
計算が苦手ですぐに金額が分からなくなるので、
名前を書いた封筒に明細を書いて入れてくれます。
その気遣いの細やかさに手を合わせてばかりです。

子育ての愛情深さは私に対しても一緒で
「いい先生だと思ったのに実はこんなダメな奴だった。」とか
「先生のくせにこんなことを言った。」「こんなことをされた。」
などの先入観や批判が一切入らないのです。
私の言動の合わない事や嫌なことは見て見ないふりをしてくださり、
生き様の判定は決してしません。

どうしても伝えた方がいいと思うことは、
例え話や遠巻きに忠告として伝えてくださいます。
その時は気が付かず怪訝な顔をして聞くのですが、
後になって、“ああ、なるほど!”と思い当たることがあり、
慌てて軌道修正をします。
おかげでこんな私でも萎縮することなく、
自分の使命に打ち込むことができているのです。

ご本人達の心の広さや劣等感のなさ、
自己肯定感の高さは勿論のこと、
純粋に人を助けたいと思う心、
価値観が違う者同士の共存共生の巧みさ、
集約すれば愛なのだなぁと感じます。

お子さんが大きくなってアトリエに通わなくなっても、
折に触れ必ず連絡をくださり笑顔を見せてくれ、
有益な情報をもたらし感情の波がありません。
私のおバカな一言で小さな波風が立ったとしても決して縁を切らない。
常に明るく穏やかに、冷静な対応をして下さいます。

足りないところばかりの私の欠点を補い、
良い所をたくさん褒めてくださいます。
長い月日を重ね人生を伴走してくださる、
絶妙な感情のコントロール能力と
コミュニケーション能力を持っている方達でした。

こんな愚かな私でも、
アトリエの指導を十数年もさせて頂くうちに成長したのです。
賢母の子育てを目の当たりにし、
さすがに悪いところや足りないところにたくさん気付きました。
そして私のやるべき事は、
娘や生徒さんの足りないところを叱る事ではないと悟ったのです。

一人一人を褒めて、
それぞれの持っている良さを引き出す事が使命だとわかって来ました。
おそらくこんなに皆さんの人生の近くに置いて頂いて、
いろんな親子さんの成長の過程を見させて頂けることはなかなか無い。
それこそが私独自に与えられた何らかの使命で、
才能の芽なのだろうと気が付いたのです。

複雑なことから簡単なことまで、
人生や生活の全てに人工知能が生かされようとしています。
これはAIでもできる。これはAIの方ができる。これはAIにしかできない。
いろんな引き算をしていった末に、
人間に残るものは愛情なのだと気がつきました。
損得ではなく相手を思いやる心。
見返りを求めず助けてやろうとする気持ち。
そんなものに生かされているのを感じ、また手を合わせるのです。

今日もおかげ様

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