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【07話】小春麗らか、希(ノゾミ)鬱

2-3 掃除


「掃除?」

 小春が問いかけてくる。

「そう。屋上ってすごく汚いだろ? ゴミとかたくさんあってさ。だから掃除しようと思って。先生に相談したら掃除道具を色々貸してもらったんだ」

「いいね。掃除したいと思ってたんだよ。俺の演奏場所でもあるわけだし! よーし、そうと決まったら、掃除だ、掃除!」

 祐希はゴミ袋を持って、軍手をはめてさっそくゴミを拾いに行った。

「私はモップにしますね。水たまりを無くしていきたいので、吸って絞りますね」

 ……そうか。それは助かる。麗にはそれを任せよう。

「俺達はちりとりと箒だな。いくらやっても終わらないくらい塵と埃だらけだけど、まあ、ある程度形になればいいんじゃないか」

「そうだね。時間もないし、始めよう」

 それから俺達は二時間ほどかけて、屋上を掃除した。放課後の時間を使って掃除をした。ゴミというゴミから、水たまりという水たまりから、そのすべてを排除して、取り除く。埃まみれになりながら、塵を舞い上げて、黒くなりながら、笑いながら。ゴミ袋はいくつも膨れ上がり、その口を縛ってまとめた。ごみ置き場に分けて置けば、用務員の人が片付けてくれるという。最後にみんなでモップ掛けをして、きれいにして終わらせた。雑巾掛けだと、途方もないからな。雑巾が何枚あっても足りない。

「……なんとかなったな。まあ、悪くないんじゃないか」

 メチャクチャ綺麗……ってわけじゃないけど、でも以前よりはきれいになった。ゴミもほとんどなくなり、水たまりも小さいのが少しだけ。埃と塵で薄汚れていた床も緑の色が見えるくらいにはきれいになった。ゴミのように、埃や塵のように隅へ、隅へと隠すように屋上へ追いやられた俺達である。いじめられて居場所を失った祐希、不良だと噂されて厄介者扱いされている俺、たくさんの知り合いはいるけど実は友達は少ない小春、そして麗。そう、俺は麗のことは知っているようで、実はあまり知らなかった。無理もない。今年二年生になってから仲良くなったのだ。小春とは一年生のときから仲が良いらしいけど、それ以外だと俺のクラスのクラス委員をやっているってことくらいしか知らない。俺は何も知らないのだ。一緒に過ごす時間が増えてきて、友だちになりつつはあるけど、俺の病気のことは知ってはいるけど、でもそれくらいだ。それ以上はない。彼女ともそのうち仲良くなれるだろうか。そんなことを思いながら、掃除用具を片付け始めるのだった。





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