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舐めても取れない

コンビニスイーツを見ると思い出す人がいる。
今朝もいつものコンビニのスイーツコーナーを横目で見送り、レジで煙草を購入した。


大学生の時、少しの期間お付き合いをしていた男性がいた。
彼は年上で、学生の私にとってはとても魅力的な大人だった。
彼の職業上、深夜若しくは早朝しか会うことができなかった。忙しい中でも会ってくれるのが嬉しくて、時間の融通が利く私が彼の生活スタイルに合わせてデートをする、という日々を送っていた。

日中に会えない。だとしたらする事はただ1つ。



ドライブデートである(ど健全)。



お決まりのデートコースは、海や広い公園に行って散歩をしたり、山から夜景を見たりする、といったもの。
道中、コンビニでスイーツを買って食べながら目的地へ向かうのが恒例となっていた。

その日もコンビニで甘いものを購入し、車で海に向かった。
彼が運転している横で、私はシュークリームを食べた。
手が汚れたので、ティッシュを探しておもむろにダッシュボードを開けた。



赤ちゃんのおしり拭きシートが出てきた。



予想外のアイテムを発見し、困惑。
も、もしかしたら、前に付き合っていた女性にお子さんがいて、古いおしり拭きシートを捨て忘れていたとか…?うん、年上の彼の事だから、そういうこともあり得る。気がする。

そっと開け口からシートを引っ張ってみる。


驚くほどウェッティ。


あ、これ最近も使ってるやつじゃん。
「ねえ、なにこれ。」

彼がいつもの声色で答える。
「実は俺、結婚してて。子供が3人いる。高校生と中学生。」

??????
彼よりも、彼の子供の方が私と年齢近いやん。

「そのおしり拭きシートは、結婚を前提として付き合っている女性の息子用だよ。」

?????????
ワタクシ、3人目の女だと発覚。
既婚者・子持ち・彼女持ちのフルコンボ。

彼は優しく言った。
「あ、そのおしり拭きで、手拭きなよ。」


私は


思考停止状態のまま


とりあえず


おしり拭きシートで手を拭いた。



勿論、きちんとお別れを告げた。
彼から貰った本は古本屋に50円で売った。その50円を足しにして自動販売機のジュースを買い、一気に飲み干した。
お下がりの香水はティッシュに吸わせ、破いたツーショットの写真と共に袋に入れ、大学に設置されたゴミ箱に投げ捨てた。


静かな夜の大学には、ほんのりとウッディな香りが漂っていた。

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