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第十回:無料かつ柔らかいほうが広く伝播する

いろいろあって更新が遅くなりました。すいません。

さて私は前回、出版メディアを「お金」と「固さ」に分類したわけですが、「固さ」という軸に倉下さんが驚いてくれたのが嬉しかったです。やった!

問題は、「だからどうだっていうんだ?」という話になるでしょう。英語で言えば ”So what?” です。さきに結論を言うと、これは「コンテンツの流通しやすさ」に強く関わってくる話であると、私は思っています。

まず「お金」の軸。有料のコンテンツは、原則として買った人にしか伝わりません。"paywall" という言葉もあるように、有料か無料かのあいだにはとてつもなく高い壁があります。

もちろん回し読みとか海賊版といった形で流布してしまう可能性はありますが、これらは「無料のコンテンツ」として二次流通している事例とみなしたほうがいいでしょう。

そして「固さ」の軸。コンテンツは固いほど伝わりづらく、柔らかいほど伝わりやすいです。パッケージ化されているメディアは、もっと柔らかいメディアに比べたら、どうしても伝わりづらいのです。それがたとえ無料であっても。

たとえば、わざわざパッケージ化した(綴じた)本を「Kindleストア」などの電子書店プラットフォームで無料配信するより、そもそも無料で読むことが前提になっている「小説家になろう」などの投稿プラットフォームで各話をバラバラに公開したほうが、読んでもらえる数は多くなるはずです。

「本」というメディアの定義のひとつに、「紙葉が綴じられている」というのがあります(『本の知識』日本エディタースクール編集発行/2009年)。「綴じられている」というのは、「閉じられている」と同義だ、と捉えるといいかもしれません。外に内容が伝わりづらいのです。

つまり、とにかくたくさんの人に読んでもらいたいなら、チャートで言えば無料より左側(お金を払ってでも読んでもらうという方向もあり得ます)で、なるべく柔らかい上側の手段をとったほうがいい、ということになります。

ところがそれだけでは「稼ぐ」ことができない……という問題提起をしたところで倉下さんにバトンを渡してみます。

倉下さんの原稿へ続く

最後までお読みいただきありがとうございました。