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江戸時代から伝わる伝統的な藍に触れて

先日、三重県いなべ市にある藍染工房∞伊勢藍さんに伺い、
染師修行中の神野さんが布を染色されているところを撮影させていただきました。

神野さんは元々舞台俳優としてご活躍されており、約1年前には、とても大切で思い出深い作品撮りに出演いただくといったご縁がありました。


そんな神野さんは今、将来的には都内で自身の工房を設けることを目標に、日々藍染めの修行に励まれています。

撮影前の車の中でお話を聞かせていただいたのですが、伊勢藍さんは、江戸時代から伝わる伝統的な「灰汁発酵建て」という藍染技法を忠実に守っている工房だそうです。

化学薬品を使用せず、天然の素材のみで藍を作られているため、その技法で藍染めされた布は肌に優しく、防臭効果等にも優れているという特徴があります。

ただ、化学薬品を使用しない分手間がかかり、1日に染められる布の重さ(量)が決まっているため大量生産には向かないなど、制約も少なくはないそうです。

工房に足を踏み入れると、染液の独特な発酵臭に包まれると同時に、窓から差し込む光の色まで藍色に染まっているような感覚に陥りました。


この日はまず、スカーフを染めていただきました。

美しく繊細なグラデーションを表現するため、液に漬ける布の部分や時間を微妙に調整していきます。

漬けては水で洗い、漬けては水で洗い・・・根気のいる、繰り返しの作業が続きます。

染め液はいくつかある大きな甕の中に保管されているのですが、それぞれの窯は同じくらいの温度に設定されているにも関わらず、寿命が全く同じではないといったように個性があるようです。
同じように育てても、どのような性格が形成されるか分からないという点は、人間のようだなと感じました。

数十分後、神野さんが満足そうに「自分でも綺麗に染められたと思います」と布を引き上げた時、(写真では分かりづらく申し訳ないのですが)ため息が出てしまうほど絶妙な藍のグラデーションが立ち現れました。

個人的な話なのですが、青色は私が幼い頃から一番好きな色です。
写真を始めてから、色について調べている中で、日本には様々な種類の青色が存在し、響きの美しい名前を与えられているという事実に深く感じ入ったことがあります。
私は特に「縹色」という浅めの青色が好きで、つい最近、縹色は藍で染めた色の総称だった(参考URL)ということを知りました。

染められた後の布が干されているお部屋も撮影させていただきました。
少しずつ色の異なる青色に彩られた布が気持ち良さそうに、光の中を泳いでいました。


その後、靴下を染めていただきました。

一度液に漬けただけでは、緑色のような浅い色だったのが、

どんどん藍色に染まっていく様子は魔法のようでした。


靴下が液から引き上げられた時の色を一瞬でも撮り逃したくはないと、レンズを覗き込む目に力が入りました。


染めていただいたスカーフと靴下は、今、私の手元にあります。
スカーフはまだ機会がなく使用できていないのですが、靴下は早速家の中で履いています(何ならこのnoteを書いている今も履いています)。

神野さんは、人の手で一枚一枚染めるものだし、天候や湿度などによっても染液の状態が変わってくるので、全く同じようには染められない、と仰っていました。
世界にひとつだけしか存在しない、私だけの藍色だと思うと、余計に愛おしさが募ります。

神野さん、伊勢藍さんのみなさま、
この度は貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました。


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