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ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ

アポトーシス。
私たちは獲得した細胞を後生大事に抱えて老いるのではない。
細胞は自ら死し、新たな細胞を迎え入れる。

私たちはわずかに位相をずらしながら、
自らを更新しているのだ。

私は私に戻れない。
私は未来にいない。

1981年5月。早大大隈講堂裏特設テント。
「朝日のような夕日を連れて」で旗揚げをした第三舞台。
私はこの旗揚げ公演を観た700人のうちの一人だ。

演出家・鴻上尚史が、この芝居で一度も姿を見せることのない登場人物、
みよ子に書かせた遺書。
「この宇宙は分子によって成立している。どんなに多くても、有限な分子によって成立している。だとすれば、有限な分子が、有限な組み合わせを、無限な時間のうちに繰り返すなら、もう一度、あの時と同じ分子配列が偶然に出来上がる。
その時、私は、あの時と同じ状態でそこにある。その時こそ私は、私でなくなったあの瞬間に、真っ向から立ち向かおう。何にもたよらない、何も待ち続けない、固有の人間として、私は私の寒さを引き受けようと決めたのです。
リインカーネーション。生まれ変わりを私は、信じます。」

photo : N.S.ハルシャ「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」(2013年)

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