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ジョブ・クラフティング:仕事を自分で「創り直す」ことから見える可能性

東京都立大学の高尾先生、藤澤さんより『ジョブ・クラフティング――仕事の自律的再創造に向けた理論的・実践的アプローチ』をご恵送いただきました。

本書は、今、経営学において、理論的的にも実務的にも注目の高まっている「ジョブ・クラフティング」について、日本の研究者が集って執筆した書籍です。こちら、実務の方々にも示唆深い内容だと思いましたので、本書の読了後の感想をシェアします。

本書のテーマ、ジョブ・クラフティング(JC)とは、一言でいえば、個人が仕事の内容・やり方・意味づけを見直すこと、であり、実務的にも理論的にもとても注目を集めている概念です。このJCについて本書は、“その奥深さ”と“広がり”を余すこと無く伝えてくれます。

まず、JCの奥深さとして本書は、「JCは個人の考え方(認知)の変化が重要であり、それが仕事(タスク)の変容とも結びつく」ということを(特に第1部で)様々な角度から示しています。自分たちの認知が、自分を取り巻く様々な関係者との変化を生み出す。その過程や理論を詳細かつ明確に示してくれます。ここから、JCとは、個人の中に閉じた考え方ではなく、より周囲の変化とも共鳴していくインパクトを持つ概念だと理解しました。

(個人的には、JCという概念を紐解く中で、現実とは「自分の外に存在するものなのか?」それとも「自分たちの認識や考え方によって創り出すことのできるものなのか?」という、社会科学の根本的な哲学にも触れられたことは今後の参考にもなりました)

同時に、JCの幅広さとして本書は、今時の様々な企業課題について、JCがとても意義深いことも明示してくれます。具体的には、テレワーク、シニア労働者、高度外国人材、さらには(僕が最も関心のある)越境といったテーマについて、JCがどう関わっているのか、(特に第3部で)詳細かつ幅広に提示しています。

このパートを通じて、企業の様々な課題をJCという視点から捉え直すことができ、そこから解決の一歩目を掴める可能性があると感じさせてくれます。ですので、これらのパートについては実務家の皆さまにもおススメしたい部分です。

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ともすると、私たちは仕事について、「与えられる」もの、「降ってくる」ものと考えがちで、組織の中でどんどん自分が埋没していくような感触に絡め取られることもあります。

そんな中で、一度、JCという視点を持って仕事を「自分で創り直す」もの、と考えてみることに意義があると本書は伝えてくれます。その考え方から、今の自分の仕事の意義、そして、(大げさに言えば)社会に対する自分の見方も変化するきっかけがあるように思います。

JCという考え方の持つ可能性が、本書にはギュッと詰まっていると感じます。あらためて、高尾先生、藤澤さん素敵なご著書をありがとうございました!

そして、本書の執筆に関われた先生方へ、敬意を表したいと思います。

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