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金の国 水の国

浜辺美波が声優を務めたアニメ映画は本作が4作目だ。

まぁ、2020年の「思い、思われ、ふり、ふられ」はカメオ出演レベルなので、これをカウントするのはどうかと思うが。
また、コロナの影響で公開が2021年に延期された「名探偵コナン 緋色の弾丸」も好演していたが、ゲスト出演扱いなので、これも語るほどのものではないと思う。

ということで、本作は彼女にとってヒロイン役を演じた「HELLO WORLD」以来のメインキャラの声優を務めたアニメ映画ということになる。

本業でない人がボイスキャストに名を連ねるとブーブーと文句を言うアニオタ・声豚はダブスタの極みでしかないが(だったら、声優を本業としている人たちの歌手活動も批判しろよって思う)、浜辺美波は現在の若手女優の中では芦田愛菜や福原遥と並んでこうしたダブスタクソオタクにも受け入れられる演技をする人ではないかと思う(まぁ、福原遥に関しては最近は女優がメインになっているだけで、元々は兼業だったような気もするが)。

本作の特徴を一言で言えば、ヒロインが日本のアニメっぽくないということに尽きると思う。

顔付きは可愛いらしいし、声を担当しているのがアイドル的人気もある浜辺美波であるとはいえ、ぽっちゃりキャラだからね。

日本の普通のアニメなら、ぽっちゃり女子がダイエットしたりメイクしたりして美形になるとか、魔法などの力で可愛くなるとか、マドンナ的存在の女子と中身が入れ替わるみたいなタイプの作品はあるけれど、最初から最後までぽっちゃりキャラというのは非常に珍しい。

多分、ヒットしないと思う。日本のオタクは男だろうと、腐女子だろうとルッキズムに満ちあふれているからね。

そういう点で見れば、本作は欧米のアニメーション映画っぽいと言えるのかも知れない。

最近の欧米のアニメーションなんて、可愛い・美人系でない女性を主人公にしなくてはいけない病にかかっているからね…。
ディズニーを例に出すが、「ミラベルと魔法だらけの家」の主人公はメガネっ娘のヒスパニック。「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」の主人公は白人なのに妻はわざわざたくましい系の黒人にしている。
そういう不必要なポリコレは日本のオタクが何よりも嫌う要素だから、本作は受け入れられないのではないだろうか。

そんなことを気にしながら見ることにした。

浜辺美波の声優演技に関しては、第一声を聞いた時に、“浜辺美波の声優演技ってこんなもんだっけ?”と思った。しかし、見ているうちにおっとり・ぽっちゃりキャラの王女を演じるためにこういう声の出し方をしているんだなということに気付いた。見ている間、浜辺美波の顔を思い浮かべる必要はなかったしね。

それよりか、どう聞いてもジャイアン系の声にしか聞こえない木村昴の演技の方がどうなんだろうかと思った。一応、本職の人でしょ?

ポリコレ要素に関しては、欧米作品とはちょっとテイストが違うなと思った。欧米作品なら、本人がルックスで悩むことがあっても他のキャラがその悩んでいる人の容姿を過度にいじることはないからね。
でも、本作では平気でぽっちゃりとか0.1トンなどという言葉を使ってヒロインの容姿をいじっていた。それにいがみあう両国が花嫁として美しい娘を、花婿として賢い青年を送り合うという風習に関する批判もきちんと描かれていないしね。

なので、日本ではポリコレ過ぎる作品として、欧米ではポリコレ配慮が足りない作品として評価されるのではないかと思った。

とはいえ、本作が凡作・駄作かと言うと、全くそうではない。というか、なかなかの良作だった。若干、テンポがゆるい感じなのでめちゃくちゃ面白いと思うほどではなかったものの、この作品の世界観にずっと浸っていたいと思ったくらいだし、終盤はちょっと泣いてしまったからね。

そして、ふと思った。本作の舞台となっている金の国=砂漠地帯=商業がさかんなハイテク立国というのは中東がイメージなのかな?女性キャラが頭をストールで覆っているシーンもあるしね。
そして、水の国=貧しい=天然資源国というのはアジアの地方をイメージしているのかな?何か中国圏っぽい衣装や名前も出てきたから、中国の田舎とか、東南アジアあたりを意識しているのだろか。

また、隣り合う両国の紛争を描いた作品を今見れば嫌でも、ロシアとウクライナの関係を想起してしまう。そういう観点からすれば非常にタイムリーな作品だと思った。

でも、テレビアニメの劇場版でない国産の劇場オリジナルのアニメ映画って、かつてのジブリや、新海・細田両監督の作品など一部を除くとなかなかヒットしないからね…。興収8億円を突破した「かがみの孤城」なんて異例中の異例と言っていいくらいだからね。
何しろ、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされた「犬王」ですら興収3億円だしね。

一般層にはオタク向けと思われ、オタクには一般向けと思われ相手にされないんだよね。
オタク向けのストーリーで本業でない声優を使うという売り方は結局、一般の客もオタクも逃してしまっているんだよね。いくら良作を作っても評価されないんだよね。

ジャパ二メーションという言葉がよく使われていた時は、オタク向けのストーリーでオタク向けのボイスキャストの作品もあったけれど、最近はそうしたタイプのものは壊滅状態だしね。

そろそろ、アニメ業界・映画業界は真剣に劇場オリジナルのアニメ映画の作り方・売り方を見直した方がいいと思う。

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