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トラペジウム

アイドルアニメというのは無数に存在する。ガールズバンドやDJ、男性アイドルも含めた広義のアイドルアニメはほぼ毎クール、何かしら放送されているのではないだろうか。オタク視点の「推しが武道館いってくれたら死ぬ」とか、殺害されたアイドルの元ファンでそのアイドルの子どもとして転生した者を主人公にした「推しの子」などといった変化球もあるが、アイドルを目指す若者が仲間を集めて成長していくという展開のものがほとんどだ。

本作も大雑把に言えば、その王道展開のストーリーだ。

と言いたいところだが、実は違う。これも変化球ものだ。


アイドルを目指す主人公が仲間を集めるところまでは王道展開だ。

ところがこの主人公は、一緒にアイドルを目指そうとか、一緒に踊ろうとか歌おうとか、そういうことは一切言わない。自分のお眼鏡にかなったビジュアルや話題性を持つ女の子に友達になろうと声をかけるだけだ。

そして、主人公はメディアに存在を認知してもらうため、全然やる気がないのにボランティアイベントに参加したりして話題作りに勤しむことになる。

その戦略が功を奏し、バラエティ番組発のアイドルデビュー企画に参加し、芸能事務所に所属することに成功する。主人公の野望を何も知らぬまま(途中で気付いたみたいな台詞はあったが)、3人の“友達”はアイドルにさせられてしまう。



でも、3人はアイドルになる気がないのにアイドルをやらされているから心身ともに疲弊してしまう。彼氏持ちや陰キャもいるし、そりゃ、そうだよねって感じだ。

そして、ただ1人本気の主人公との温度差は開いていくばかりで、結局は解散となってしまう。

こんなに主人公に感情移入できないアイドルアニメは滅多にない。自分勝手すぎる。

勝手に男と関係を持って妊娠して出産した「推しの子」のアイだって、死ぬ間際のストーカー化した自分のファン=殺害犯との“和解”シーンには涙を流してしまったが、この主人公には同情できない…。

まぁ、グループとしての再結成はないけれど、友達としての絆は取り戻したという展開になる終盤はちょっとだけ感動できたけれど。



というか、全体的にダイジェスト感が強い。

原作は単行本も文庫本も買ったけれど、いずれも積ん読状態が続き、ブ⚫︎ク⚫︎フに売り払ってしまったので、本来の展開は知らないけれど、なんとなくダイジェスト感が強かった。

3人の“友達”が騙されていることに薄々気付くエピソードとか、主人公が“改心”する場面は時間をかけて描くべきだった。

それから、いきなりテレビ出演、アイドルユニット結成が決まったのに、3人があっさりとそれを受け入れているのも唐突感が強かった。その後の台詞などから、アイドルにはなりたくない、興味はないことは明らかなのだから、テレビ出演やアイドルユニット結成の際に戸惑ったり、反発したりする描写はきちんとすべきだったと思う。



1時間34分しかない単発の劇場アニメではなく1クール12話前後のテレビアニメとして作った方が良かったのではないかと思う。というか、オープニングなんて、いかにもテレビアニメのオープニングみたいに本編と独立した作りになっていたし、そのオープニング曲もリメイク版「うる星やつら」関連楽曲を手掛けているMAISONdesが担当しているんだから、「うる星」と同じノイタミナ枠でやれば良かったのでは?っていうか、この「トラペジウム」ってフジテレビ映画じゃないのか…。ノイタミナ枠でCMをよく見かけるから、てっきり、フジテレビ映画だと思っていた。

それにしても高山一実(原作者)と西野七瀬の高齢者役の声優演技は下手だね…。というか、何故、男の高齢者役なんだ?まだ、女性ならごまかせたかも知れないが、これはダメだろって思う。

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