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「艦これ」いつかあの海で

まず大前提として、酷評されたアニメの2期が作られたのが謎だった。
まぁ、公式には2期と名乗っていないし、1期と連動したストーリーではないと否定していたようだが。

そもそも、2015年に放送された「艦隊これくしょん -艦これ-」が不評だった理由というのはファンが求めるものになっていなかったからだと思う。

原作となるゲームが受けた理由は戦時下の日本の軍艦を萌えキャラ化したこと。これに尽きると思う。
こうしたミリタリーアニメというのは右傾化というよりネトウヨ化したアニオタに支持されている面が多いことから、日本やドイツが第二次世界大戦で負けなかったらという視点で作られた一種のなろう系の要素を含む作品も多い。

でも、艦これのファンにネトウヨが多くいても、彼等は作品になろう系の要素は求めていなかった。

だから、普通のなろう系アニメでは好まれる現在の中国と思われるような存在の謎の敵と戦う描写はあまり評価されなかった。

また、軍艦を擬人化したということで萌えアニメとカテゴライズされることも多いが、艦これのファンはあくまでも史実に基いたストーリー展開を求めていたので、いかにもな萌え要素である日常アニメ的な場面も好まれなかった。

さらに、キャラ=軍艦の死の描写をホラー的にしたことも不評だった。現在の中国を意識した謎の存在もホラー的だったが、ファンはホラーなんて求めていないんだよね。

そうした要素が重なりアニメ1期は酷評されてしまった。だから、2016年に劇場版が公開されたのは驚きでしかなかった。まぁ、テレビシリーズとセットで最初から企画されていたと推察されるので既にテレビ版と並行して作業は進められていたからボツにはできなかったのではないかと思う。

個人的にはネトウヨ要素、ホラー要素が抑えられていたのでテレビシリーズよりはマシだったとは思うが、それでも、シリーズの名誉を挽回するほどの作品だとは思わなかった。

「涼宮ハルヒの憂鬱」は2009年のテレビシリーズ2期(1期の全エピソードの再放送を含めて放送するやり方を2期と呼んでいいのかは謎だが)でほぼ同じ内容のものを8週連続で流す「エンドレスエイト」というエピソードを放送したせいで、一大ムーブメントを起こした「ハルヒ」というコンテンツの評価や人気は一気に低下してしまった。
しかし、2010年公開の劇場版「涼宮ハルヒの消失」の出来が良かったことから、全盛期レベルの評価までとはいかなかったもののある程度の汚名返上はできたと思う。

それに比べると、「艦これ」の劇場版の評価はそこまで高くはなかったので(テレビ版よりはマシと思った人がほとんどかな)、これでアニメは打ち止めにして良かったんだよね。
まぁ、劇場版の公開前から2期の話は出ていたということだから、日本の企業や役所によくある一度動いたものは止めれらない病みたいなものだったんだろうね。

そして、劇場版から6年経ち、「艦これ」というコンテンツがオワコン扱いされて久しい状態になっている中、2期を名乗らないテレビシリーズ第2弾「「艦これ」いつかあの海で」が放送された(正式タイトルに「」が入っているので、こうしたおかしな表記になってしまった)。

結論から言うと“1期”よりも酷い出来だった。

まずは制作スケジュールの問題がクオリティを低下させたと言っていいのではないだろうか。
今回の“2期”は少なくとも2016年夏の時点で制作決定が公になっていた。しかし、実際に放送されたのは6年後だ。

しかも、放送形態が通常とは異なっていた。深夜アニメはクールがわり(1月、4月、7月、10月)に放送が始まり、全12話前後で完結するというパターンが多いが、本作は11月スタートで全8話構成となった。

つまり、制作スケジュールやストーリー展開を練る上で通常の作品よりもはじめから余裕を持たせてもらっていたはずなんだよね。

なのに、放送開始日もなかなか発表されなかったし、いざ放送がスタートしても何度も放送が中断されてしまった。
まず、3話まで放送したところで4話以降の放送の延期が発表され、改めて1話から3話が再放送された。3話は作画ミスが多かったと指摘されていたが、どうやら、ネットの声を参照すると3話は修正した上で再放送されたようだ。
そして、放送再開となったが5話まで放送したところで再度6話以降の放送の延期が発表された。
いくら、ローカル局やBS局での放送が中心とはいえ、元々、放送枠は8話分しか確保していなかった上に年末年始に入ってしまうので急遽、放送枠を確保するのが難しかったということなのだろうか。
しかし、6話の放送は約1ヵ月後まで待たなくてはならなかったので、放送枠が確保されていたとしても5話の翌週に6話をオンエアするのは難しかったのではないかと思う。
そして、7話はさらにその約1ヵ月後、最終話である第8話はそれからまた約1ヵ月も待たされることとなったし、6話以降は放送時間帯も5話までを放送した枠とは異なる枠での特番扱いでの不定期放送となった。

コロナの影響は勿論あったとは思うが、制作発表されたのが2016年ということを考えると、そもそも、制作スケジュールがうまく進んでいなかったのは間違いないと思う。
というか、本作はKADOKAWA作品でもあるが、同社の会長だった角川歴彦が東京五輪を巡る汚職事件で逮捕されたことの方がコロナよりも影響したのではないかという気がして仕方ない。このゴタゴタで金や人の動きがうまく行かなくなったのではないかと思ってしまった…。

そして、スケジュール管理ができないことが作品の出来の悪さにもつながってしまったのだと思う。

それは、作画の乱れといった問題だけでなくストーリーとか脚本などに関しても出来が悪いという意味だ。

“1期”に対する批判として、日常シーンやホラー要素をあげる人がいた。個人的にはホラー要素はともかく、擬人化しているのだから萌え的な日常シーンがあるのは当たり前だと思っている。
でも、原作ゲームのファンや歴史マニアはそれを認めなかった。彼等は史実に忠実な戦闘シーンを求めていたのだ。
そして、彼等の声があまりにも大きかったせいで、今回の“2期”は彼等に媚びて暗い画面で延々と戦闘シーンが続く、ほとんど内容のない作品となってしまった。
ゲームはそれで問題ないし、劇場用アニメであればそれでも良かったのかもしれない。劇場版「ガールズ&パンツァー」なんてほとんど戦闘シーンだし、実写だけれど、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」なんて、“行って戻ってくるだけの映画”とネタにされるくらいバトル・シーンが延々と続くだけの映画だ。でも、劇場の大スクリーンと大音量で見るなら、アトラクション感覚としてそれもありだとは思う。

しかし、テレビモニターやPC、スマホの小さいスクリーンで小さな音量で見るテレビシリーズではそれはほとんど効果がない。
ずっと暗い画面が続く中、戦闘が繰り広げられていたのでは何がなんだか分からないからね。

だから、この内容でやるならテレビアニメではなく、2部作の劇場版、もしくはOVAのイベント上映という形にすべきだったのではないかと思う。

下手に原作ゲームのファンや歴オタに媚びたせいで、一般的なアニメファンには酷評されるという形になり、ただでさえオワコンになりかけていた「艦これ」というコンテンツにさらにとどめをかけてしまったって感じかな。

完全にコンセプトの失敗だと思う。

そして、最終回のエンディングも意味不明だ。

艦娘たちが、現在の都内の観光地や繁華街を現在の女の子の格好で歩いている様子が描写されているがアレは何?艦娘が現在の若い女の子に転生したのか?

百歩譲って、艦娘たちの転生は(少なくとも日本には)平和な世の中が来たから、かつての艦娘たちは安心して日常生活を送ったり、遊んだりすることができるようになったということを伝えるためのものだとしよう。
だとしたら、その後に艦娘たちの遺影が続々と出てくるのはおかしいでしょ!生き返ったんだから、遺影を出す必要はない。
二百歩譲り、転生と遺影の両方を描くのは仕方ないとしても、それなら順番は、転生した姿を見せてから遺影で振り返るのではなく、遺影を見せていったん話を終えてから後日談として転生パートを見せる形にすべきでは?

そもそも、作中で全滅したということは遺影に書かれている擬人化された軍艦の没年は全員同じはずなのに、何故か史実準拠らしいのも意味不明だが…。

というか、転生エンディングにしたということはゲームのファンや歴オタが喜んでいた史実に基いた展開も無視したことになるわけだしね。

途中まで原作ゲームファンや歴オタに媚びて延々と暗い画面の戦闘シーンが続くというテレビアニメとしては全然面白くない展開にしていたのに、最終回で史実を無視して艦娘を全滅させ、しかも、現在に転生させてしまった艦これ2期は一体何がやりたかったのだろうか?

2ヵ月で終わるはずのものを5ヵ月もかけて見させられた上にこの出来なんだからね…。
やっぱり、五輪汚職で会長が逮捕されたことでKADOKAWAグループ各所の色々なことが停滞してしまったのかな?

本当にクソアニメだったな…。

※画像は公式HPより

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