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マダム・ウェブ

本作の全米でのオープニング週末の興行収入はソニー・ピクチャーズのスパイダーマン・ユニバースで最低となった。また、マーベル原作映画としては2015年リブート版の「ファンタスティック・フォー」以来となる公開初週の興収ランキングで初登場首位を逃した作品ともなっている。

さらに、監督が女性で主要キャストのほとんどが女性で占められている作品(本作ではポスターに登場する5人のうち主人公を含む4人が女性)は一般的にポリコレ視点から批評家に過大評価される傾向が強いが、本作はロッテン・トマトでは批評家にはあまり支持されていないようだ。というか、一般観客からの評価も微妙となっている。

マーベル・シネマティック・ユニバースにカウントされる作品(本作やリブート版「ファンタスティック・フォー」は含まれない)では全米のオープニング興収や世界のトータル興収が最低となった「マーベルズ」も本作同様、監督が女性で主要キャラが女性で占められ、酷評された作品ではあるが、それでも、批評家の評価も興行成績も本作よりは上だった。

なので、これはとんでもないクソ映画なのではないかと思えて仕方なかった。見るのがちょっと怖かった。



でも見て良かった。
結論から言えば意外と面白かった。

コロナ禍以降のマーベル原作映画というか、DCも含めたアメコミ映画の中ではかなり面白い方だと思う。ちなみにコロナ禍以降では個人的には「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: VOLUME 3」がベストだと思う。「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」や「THE BATMAN-ザ・バットマン-」は出来が良いかも知れないが長いのが難点。

本作は意外ときちんと伏線のはられた脚本だった。主人公の職業が救命士であることが後の場面できちんと活かされているしね。

また、未来を予知できる主人公の能力を「クリスマス・キャロル」と絡めて描くのも秀逸だった。
同作の主人公・スクルージは3人のゴーストと出会ったことをきっかけに過去を振り返り、現在をきちんと知ることができ、それにより悲惨な見通しだった未来を変える決意をするが、本作の主人公も3人の少女と出会ったことをきっかけに自分の出生という過去と向き合い、現在の問題点を把握し、惨劇になると予知されていた未来を覆すための努力をする。

驚くほど、ストーリー展開が「クリスマス・キャロル」だった。

おそらく、全米の興行成績が振るわなかったのは「マーベルズ」の時にも指摘されていたように監督が女性で、主役を含む主要キャラを女性が占め、しかも、様々な人種を配分し(本作では主人公の“弟子”となるティーンエイジャー3人組が黒人、白人、ヒスパニックという構成で、ヒスパニックは不法移民の子ども)、しかも、アンチルッキズムをアピールしたキャラもいる(3人組のうち白人をメガネっ娘にしているのは白人をカッコよく見せない配慮かな?)。しかも、主人公は孤児だし、最終的には障害者にもなる。まぁ、ポリコレ要素満載で嫌になるという人も多いと思う。

それから、いわゆるヒーロー映画疲れというのもあると思う。
マーベル・シネマティック・ユニバースやDCエスクテンデッド・ユニバース、さらには本作を含むスパイダーマン・ユニバース、その他にもどのユニバースにも含まれないアニメーションの「スパイダーバース」シリーズや「THE BATMAN」、配信作品などもある。
日本劇場公開作品しか追っていない自分でもいっぱいいっぱいなのだから、配信作品まで見ている人は精神的余裕がないのではないだろうか。

一方、批評家筋に酷評されたのはおそらく、見た目はポリコレ要素満載なのに、内容がリベラルや左派が喜ぶものになっていなかったからだろう。

職場のホームパーティーでは男女の役割が明確にされていたし、主人公の“弟子”となる黒人やヒスパニックの少女もお行儀の良い娘ではなかった。

リベラルや左派は理想の世界から1ミリでもずれるとネトウヨ扱いしてくるから、この映画のポリコレ要素には納得いかなかったのだろう。

でも、仕方ないんだよ。現在の話ならともかく、これは約20年前の2003年の話だからね。

ところで、2003年の話なのに、4ノン・ブロンズ“ホワッツ・アップ”、メレディス・ブルックス“ビッチ”、クランベリーズ“ドリームス”といった90年代の女性ロック・ボーカル曲がやたらと使われているのは何故?

それから、ブリトニー・スピアーズの“トキシック”はこの時代の曲ではあるが正確にはシングルとしてのリリースは年が明けてからなんだよね。収録アルバムは2003年11月にはリリースされていたけれど、推定で2003年の秋のはじめ頃を舞台にした作品でラジオでかかり、リスナーがそれを聞いて盛り上がるという描写はおかしいと思う。

まぁ、クモの毒で特殊な能力を手にした人たちと“トキシック”(有毒な)を引っかけた親父ギャグ的選曲なんだろうが…。

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