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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

30年前に公開された実写版マリオ映画「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」は興行面でも批評面でも大コケした大失敗作と言われている。何しろ世界興収が製作費を下回ったくらいだからね…。
ちなみに日本では配収3億円だったらしい。配収は興収の6割前後と言われているので興収換算すると5億円程度だろうか。まぁ、当時は日本映画より米国映画がヒットしていた時代だからこの成績では大コケ扱いになってしまったのだとは思う。今なら洋画にしては頑張ったって言われる数字だけれどね。

同じ1993年7月日本公開の米国映画に「ジュラシック・パーク」という記録的な大ヒット作品があったことを考えると大健闘なんじゃないかなと個人的には思う。そのほかにも、トム・クルーズ主演の「ザ・ファーム 法律事務所」もヒットしていたしね。

というか、「ブレックファスト・クラブ」などの青春映画や「ホーム・アローン」シリーズのコメディ映画で知られるジョン・ヒューズ脚本・製作の「わんぱくデニス」や、米国でヒットした「飛べないアヒル」、ウーピー・ゴールドバーグ主演の「メイド・イン・アメリカ」、「グレムリン」シリーズなどのジョー・ダンテ監督作品「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」、カルト的な人気を誇る「フォーリング・ダウン」といった作品より遥かに日本ではヒットしている。

自分が同作を見に行った日比谷スカラ座(≒現在のTOHOシネマズ日比谷)は結構混んでいたから非常階段を使って退場させられたくらいだしね。ちなみに余談だが、同作を自分が見た日は雨が降っていたが、ビニール傘を館内に置いてきてしまったんだよね。そんなことを覚えているくらいだから決して、世間が言うほどクソ映画ではないという印象を持っていたのではないかと思う。

それに映画自体の出来は決して傑作ではなかったかも知れないが、サウンドトラックに関しては文句なしの上出来だったと思う。

米国では映画がコケたのに合わせて全米シングル・チャートでの成績も最高位94位に終わってしまったが、ロクセットによる主題歌“オールモスト・アンリアル”は超名曲だし(個人的には好きなロクセット楽曲のトップ5に入る)、そのほかにもジョージ・クリントンがWAS (NOT) WASの大ヒット曲をカバーした“Walk The Dinosaur”や、このサントラ用にレコーディングされた楽曲ではないけれど世界的な大ヒット曲となったUs3の“Cantaloop (Flip Fantasia)”もサントラ収録曲だ。少なくとも当時の米英の洋楽シーンを追いかけていた人なら、このサントラに興味を持った人も多かったはずだ。自分も当時、ロクセットとジョージ・クリントンのCDシングルを買ったしね。

そんな問題作以来30年ぶりとなるマリオ映画がCGアニメーション作品である本作だ。実写版を見たスカラ座の跡地を吸収合併したようなTOHOシネマズ日比谷での鑑賞となったのも運命を感じる。

作品自体は可もなく不可もなくという感じかな。イルミネーション作品ということで過度なポリコレもないので最近のディズニーやピクサーの長編アニメーションを見た時のようなフラストレーションはなかった。

それから、ゲーム中のキャラクターの動き(鉄骨を渡るなど)をうまく映画の展開にはめこんでいるのはうまいなと思った。

ただ、イルミネーションのほとんどの作品って(「SING/シング」1作目を除く)、個々のシーンは笑えたり、感動したりできるし、音楽の使い方もいいんだけれど、何故か作品全体を通して見るとテンポが悪くて退屈に思えてしまうんだよね。ドリームワークス作品にも似たようなところがあるけれど、あれってなんなのかな?

デジタル編集時代になり、作品全体を通して見ることがなくなったからか?
それとも、米国のアニメーション映画って監督2人体制が基本だが、たとえば、1人が作画中心、もう1人が声優の演技中心みたいに立場が明確になっていないことがイルミネーションやドリームワークス作品には多いってことなのかな?

それにしてもベタベタな選曲だったな…。

ボニー・タイラー“ヒーロー”は最近も「シャザム!〜神々の怒り〜」で聞いたばかりだし、AC/DC“サンダーストラック”なんて一体、何本の作品に使われたのか分からなくらいだし、a-ha“テイク・オン・ミー”は同じイルミネーション作品の「怪盗グルーのミニオン大脱走」にも使われていたしね。

まぁ、本作で“テイク・オン・ミー”の使われ方が良かったのは同曲が1985年を象徴する楽曲だったからというのもあるのかな?

ゲーム「スーパーマリオ」シリーズは1985年にスタートしたが、“テイク・オン・ミー”が全米ナンバー1ヒットとなったのもこの年だったしね。

もっとも、マリオというキャラクターは1981年に発表されたゲーム「ドンキーコング」で既に登場しているし、“テイク・オン・ミー”も有名なのは1985年にリリースされた再レコーディング・バージョンだけれど、実はオリジナル・バージョンは1984年にリリースされているので、マリオも“テイク・オン・ミー”もどちらも厳密には1985年に生まれたヒット作ではないんだけれどね。

そういえば、本作はユニバーサル配給のイルミネーション作品だけれど、最後にもう一回ユニバーサルやイルミネーションのロゴが出てくることはなかった。本作はあくまで任天堂の映画ってことなのかな?
そして、本作を鑑賞したTOHOシネマズ日比谷ではラージスクリーンフォーマットのTCX上映だったが、上映終了後に投影される退場時の注意のお知らせとフォーマットが異なるせいなのか、サイズやピントの調整に手間取っていたのが面白かった。


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