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名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊

ケネス・ブラナーはかつて、ウィリアム・シェイクスピアの全戯曲を映画化したいと言っていたが、その計画はいつのまにか頓挫してしまったようだ。

そのかわりではないだろうが、最近、彼がコンスタントに映画化しているのがアガサ・クリスティ原作の「エルキュール・ポアロ」シリーズだ。

本作はシリーズ第2弾となる前作「ナイル殺人事件」からわずか1年7ヵ月というハイスピードで登場した続編ではあるが、同作は元々は2019年公開予定が2020年に延期となったところ、そこでコロナ禍に入ってしまい何度も公開延期となり、最終的に2022年の公開になったという経緯がある。シリーズ1作目の「オリエント急行殺人事件」が2017年公開なので、本来なら数年に1本ペースということなのだと思う。

ただ、シリーズ3作目がこの作品になるとは誰も思っていなかったのでは?「オリエント急行殺人事件」や「ナイル殺人事件」同様、過去に映画化されている「地中海殺人事件」や「死海殺人事件」のリメイクになると思っていたのでは?

ところが映画化されたのは本作だ。

「オリエント急行殺人事件」や「ナイル殺人事件」、「地中海殺人事件」、「死海殺人事件」は映画の邦題は原作の邦題とは異なるものの原題は原作通りとなっている。

しかし、本作はそうではない。

映画版の原題は「A HAUNTING IN VENICE」だが原作の原題は「HALLOWE'EN PARTY」だ(ちなみに邦題も「ハロウィーン・パーティ」と原題通り)。映画版のタイトルが変えられたのはオリジナル要素が多いというのもあるのだろうが、原作の知名度が過去の映画化作品より低いというのもあるのではないかと思う。

まぁ、「ハロウィーン・パーティ」のままだと10月公開にしなくてはならないというのもあったのかも知れないが…(実際は9月公開)。

そして、本作はホラー要素が強めの作品とは言え、10月の米映画興行はホラー映画のシーズンだから、本来のホラー作品と勝負しても勝ち目はない。だから、10月公開にする必要もないってところなんだろうね。

というか、上映時間も1時間43分とシリーズ中最も短い尺となっている。それだけ内容が薄いってことでは?
実際、見ていて退屈に思う場面も多かったしね。しかも、夜の場面がほとんどだから、ベニスの風景を楽しむようなものでもない。観光映画の要素があった「オリエント急行殺人事件」や「ナイル殺人事件」とはその辺りが決定的に違う。それに暗いシーンばかりだから見ていて睡魔に襲われそうになる。

米国でも日本でも過去2作ほど話題にならないのも当然だと思う。

Wikipediaによると、日本語版と英語版で数値は異なるものの長編・短編あわせてポアロが登場する小説は80作以上あるということだから、ケネス・ブラナー版「エルキュール・ポアロ」シリーズの次回作選びはもう少し慎重にやってもらえたらと思う。

本作で絶賛したいのは霊媒師役で出演していたミシェル・ヨーの怪演ぶりだ。特に何度も口にする“リスニング〜”というフレーズはクセになるくらいだった。個人的にはアカデミー主演女優賞を受賞した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」よりも賞レースで評価されるべき演技だと思った。しかし、あんなに早々と退場するとは思わなかったが…。

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