植物栽培初心者にありがちな「水やり恐怖症」
私は植物画を描きつつも、実際に南アフリカなど異国の植物を育てていて、ブログでその栽培方法なんかを書いたりしています。
1年ちょっと前に私の住む町に移住をしてきて友達になった若いカップルがいて、古民家を改装しながらカフェをオープンさせようと頑張っていたので植物をプレゼントしたのですが、先日プレオープンを前にお店に呼んででいただいたときにあげた植物を見てみると明らかに水が足りていない。
「もう少し水をあげても大丈夫だよ」と教えると、
「そうだったんですか!!いただいた希少な植物だったので大事に育てようとして、こまめに水をぽたぽたと少しずつあげてました!」
と言っていました。
「大事に育てる」=「水をあげすぎない(水をたくさんあげるのが怖い)」
というのを見たのは彼らが初めての経験じゃないのですが、普段植物を育て慣れていない方にすごくありがちな行動なんだなと気づきました。
1.環境の変化や水やり・施肥というアクションへの恐怖
- 栽培方法を一般化しにくい問題
自分自身も植物の栽培方法などをブログで発信していますが、自分なりに気を付けているのは「万人に共通の栽培方法はほぼ無い」という点。
よくSNSやブログに来る質問として、
どのくらいの頻度で水やりをしていますか?
植え替えは今の時期にやっても大丈夫でしょうか?
どのような土の配合にしていますか?
というものがあります。
皆さん「大事な植物を枯らしたくない」「大切に育てたい」気持ちからご相談いただいているので、極力私なりの経験に基づいたご意見をお伝えするようにしています。
でも私の栽培方法って、私の家の環境での話であって質問者さんの環境とは違うので、そっくりそのままお伝えして真似していただいてもうまくいかないことが多いんです。
水やりを例にしても考慮する要因として様々なものが挙げられます。
例えば、
日当たり、風通し、室温(外気温)はどうか
使ってる用土は乾きやすいか、保水性が高いか
お住まいの地域の気候
使ってる鉢の大きさ(鉢が大きければ乾きにくく、小さいと乾きやすい)
これらはざっくり挙げてますが、例えば1の「日当たり、風通し」などはちょっとした置き場所の違いでも差があるものです。私は水やりの際に土の乾き具合などを見て加減をしていますので、細かいことを言うと同じ家の中でも水やりの程度に差があります。
- 初心者は一般的な栽培方法を求めている
「いやいや、そこまで細かいことは聞いてなくって、もっと一般的な答えを聞きたいんですよ!」
って思われてるのは重々承知しています。
ただ、ブログで情報発信をしている身として、ここ数年の植物関連のキュレーションサイトでよくある、植物栽培初心者に向けて書かれた”一般化された栽培方法の弊害”がここに出ているのかなと思います。
おおよそ実際には栽培したことがないであろう人物が執筆した、正確とは言えない情報を初心者が鵜呑みにしているケースが多々あります。
実際に育ててみると同じ品種の植物でも、育て方とか使ってる資材によって氷点下のビニールハウス内でも越冬できるし、思いもよらない方法で栽培が可能だったりするんですよね。
私の場合は、自分の環境での事例として参考程度にしてもらえるようブログに書いていますが、一般化された栽培方法や知識を求める方への意見としては「ご自身の環境ではどのような方法が適切か、枯らすのを覚悟で色々試してみてください」とお伝えしています。
枯らしたくないのは分かるんですけどね、枯らさなきゃわからないことも多いんですよ。本当に。
2.変化・成長するものの維持の秘訣は「変化に適応すること」しかない
冒頭の「水やりを恐れる」という行動は、現状なんとか維持できている植物(実際は水不足でカラカラ)に対して、しっかり水やりをするという「自発的な環境変化」を恐れているのかもしれません。
手を出さなきゃ今のまま(のように見えるが実際は弱ってる)維持できると思い込んでしまいがちで、水やりにしても本来はもう少しメリハリのきいた管理が必要だったりするのですが、申し訳程度にしか水をやらないケースが多いですね。
前述のカップルには、水やりをする際は「鉢底から水が流れ出るくらいしっかりあげてね」と伝えましたが、「そんなに水を挙げていいんですか!!」と驚いていました。
多くの観葉植物は多年生植物で、年月の経過とともに成長します。大きくなれば植え替えも必要だし、現状維持をしたければ植物の変化に自分が合わせるしかありません。
そのためには、やっぱり失敗することもありながら自分の栽培環境にあった管理を自分なりにつかむしかないのだと思います。
3.「育てる」or「管理する」
こうやって考えてみると、一番の違いは「考え方」なのかもしれません。
植物の栽培において、特に観葉植物の育て方に苦労されている初心者の方は「管理する」とか「維持する」という方向性が強いのかなと感じることが多いです。
インテリア的な立ち位置で、生き物という感覚よりも置き物としての感覚なのかも。
枯らしたり腐らせることが怖いこともあると思うのですが、「育てる」という視点で考えると、植物なのですから日の光も、風も、水も、肥料も必要なんですよね。
大きく育てよ~、花咲かせてくれよ~と思って接すると、きっと水を欲しがってるのは葉や茎を見ると気づきますし、元気がなくなったときにも気が付きます。
友人に渡した植物の様子を見てそんなことを思いました。
いただいたサポートは今後の創作活動でより良いものを制作するための画材購入費用などに使わせていただきます!