植物と暮らし、時間の経過を楽しむ|不惑
先日、誕生日が来て40歳になりました。
昔から40歳は「不惑」と言われていて、自分の生きてきた道が固まり惑わないというのが孔子の言葉。
「不惑」は周囲に影響されない人間でいられるかという意味なのか、自分の信じる道に迷いがなくなるという意味なのかは分からないけれど、自分のライフスタイルに関しては「こうして生きていきたい」というものが見えてきた気がします。
自分の創作スタイルに関しても、色々なツールやモチーフ、作風、ジャンルも含めて沢山試してみたけど、最近になって自分の原点回帰というか、絵を始めたころのスタイルに少し戻ってきて落ち着きました。
今回は、自分の40歳になったときに何を考えていたか、、という記録の意味も込めて書き記しておこうと思います。
Time is moneyだからこそ、時間をかけることに価値を感じる
世の中は「タイパ(Time performance)」という言葉が生まれるほど、時間に余裕がなくなってしまっている人が多いらしい。
時間に余裕がないから映画を倍速で見たり、すぐに答えを知りたがってしまう。つまりは「時間の価値が高くなった」ということなんだろう。
かといって裕福になった人が増えたわけではないのでお金の価値も別に下がっていないし、むしろ時間よりも目に見えてお金の価値は高まってる気がします。
私の描いている絵は「細密線画」がメインで時間がかかる創作スタイルだし、趣味でやってる園芸はそれこそウン十年と時間をかけて自分がジジイになってもほんの数センチしか成長しないような植物を育てている。
下の写真たちは私が種から育てているサボテンたちです🌵
時間の価値が高くなってるのに、特に時間がかかるものばかり。
だからこそ、自分は「時間をかけることはすごく贅沢なこと」だと思っているし、その過程が一番楽しい、すっ飛ばすべきではないポイントだと思っています。(あくまで自分の意見ですが)
成長スピードが遅い植物を育ててると感じること
以前こんな記事を書きました。
園芸がコロナの巣ごもり需要で若干ブームになって、自生地で数十年単位で成長した植物が盗掘され、輸出され、その過程で寿命と価値をすり減らしながら購入者に届き、短い時間で消費されてしまうという問題についての記事です。
自生地の環境破壊は問題ですが、個人的に感じるのはその植物がそのサイズになるまでにかかった途方もない時間を考えると、種から育てるのが趣味である私にとっては恐れ多くて手なんか出せない。
自分が塊根&多肉植物栽培を趣味にしていて得られる恩恵ってのはたくさんあるんですが、一番はその「成長スピードの遅さが自分にくれる時間感覚」なのかなと思うんです。
毎日のように世話をしてると、ふと
「あ、こいつ前見たときよりちょっと大きくなってる」
ということに気付くことがあって、そんなときに成長が遅い植物なりにやはり変化があって、各々のスピードで変化がある。
すると、その遅いスピードで変化する植物の頑張りのようなものを感じて、自分も頑張ろうって思えるし、自分に何か停滞感を感じているときでも「自分のスピードで少しずつ進めばいい」って勇気をもらえます。
だから、この成長が遅い植物がなんとも愛おしくて、
「頑張って大きくなれよ~、お前の成長をしっかり見届けるからな」
と思いながら世話をしています。成長が早い植物もたくさん育てていますが、各々の、その植物なりの変化が色んなタイミングで見れたり気づけたりするので面白いのです。
自身の創作にも時間がかかるものを選んだ
これまでに水彩画や版画、デジタルイラストも含めて色々な創作をやりましたが、最近では自分の原点である「植物細密画」に回帰してきました。
上の動画にあるように、線を重ねること(ハッチング)によって陰影を作って描いています。一つ一つの線をかくときの時間の流れが自分にとっては心地よいものだし、こうやって作り出すものに自分は喜びを感じます。
ただ、そこ(かけた時間)を強調しすぎると問題もあって。
この作風の時に「細かいですね」と「どのくらいの時間がかかるんですか」以外の感想を言ってもらえるようにしたいとずっと思ってきましたが、「時間はかけつつも、創作物の価値をかけた時間と細かさだけにしたくない」のです。そこは今後の自分のずっと続く課題だと思っています。ムズカシイネ。
成長の遅い植物と時間のかかる創作で生きる
手っ取り早く得られるものもいいけど、人って「手間暇をかける」って結構好きな人が多いと思うんです。
時間って不思議なもので、焦ったからって沢山手に入れられるかと言ったらそうではなく、急がば回れなんて言葉もあって、結局は自分の中にある時計がどんな時間軸なのかが大事なのかなと思っています。
「そんなこと言ってる間に周囲に置いて行かれちゃう!」っていう人もいると思うんですが、追いかけたかったら追いかけたらいいんですよね。ただ、あまり急ぐと大事なもの取りこぼしたり、大切な何かを無くしたりしないかなとこの年になって思うようになったので、
いつも焦り気味だったり、周囲のスピードに合わせて疲れちゃう人には、「自分の時間軸をゆっくりにしてくれる成長の遅い植物を育ててみませんか?」と提案したい。
あわよくば、自分の絵も見ていきませんか?とお声がけでもして、一人でも立ち寄ってくれたら嬉しいなと思う、植物好きな不惑の絵描きの記録でした。
お読みいただきありがとうございました♪
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