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【論文レビュー】シャイン自身が語る、21世紀のためのキャリア・アンカー:Schein(1996)

エドガー=シャインのキャリア論を理解したく、金井先生の解説本に頼りたい気持ちを抑えて、シャイン自身が書いた論文を読んでみました。本論文は、シャイン自身が提唱したキャリア・アンカーをレビューし、提唱した当初(1970年代)から論文執筆時(1990年代中盤)を比較し、かつ21世紀以降を想定しての人々のキャリア観の変化について述べておられます。

Schein, E. H. (1996). Career anchors revisited: Implications for career development in the 21st century. Academy of management perspectives, 10(4), 80-88.

雇用社会の予測の正確さ!

まず驚くのは、シャインが21世紀の雇用社会に対する予測の正確さです。これは、かなりスゴイ。企業組織の変化、職務の変化、働き方・生き方の変化、などなど2022年の現時点で読んでも納得感のあるものが多いです。

こうした環境変化に伴う、人々が持つキャリア・アンカーの傾向の推移もなかなか興味深いです。たとえば、1970年代と1990年代とで最も変化したキャリア・アンカーは「ライフスタイル(Lifestyle)」だとシャインはしています。組織における外的キャリアを重視することが当たり前であった時代から、内的キャリアとそれに付随してライフと整合したライフキャリアとを重視する時代になり、「ライフスタイル」をキャリア・アンカーとする人々が増えたようです。

継続的な学習の重要性

こうした変化の時代において個人にとって重要なのは継続的な学習です。日本では2020年代になってようやくリカレント教育が流行していますが、1990年代後半の時点でシャインは継続学習の重要性を説いています。

変化に対して学習で対応するというアプローチは、本論文と同じ年に出版されたArthur & Rousseauのバウンダリーレス・キャリアを想起させられ、当時のアメリカでのキャリア論の潮流だったのでしょう。

マッチングスタイルは変わらない!?

至極面白い論文ではあるのですが、気になるのはキャリアをマッチングで捉えている点です。もちろん、ある程度は、価値観を明らかにして職務との接合を図るうえでマッチング・アプローチを取ることは理解できます。ただ、シャインのアプローチでは、キャリア・アンカーを基にして職務とマッチングさせるだけで留まり、それ以降の自分自身での開発は射程に入っているようには思えません。

組織内キャリア開発の重視も変わらない!?

また、さまざまなキャリア・アンカーについて触れながらも、結局のところは「全般管理(General Managerial Competence)」を重視しているのだなぁと感じる部分もあります。キャリア・ラダーに関する記述も数箇所あることから、一つの組織の中でキャリアをすすめるという選択肢が主要なものとシャインは捉えているのではないでしょうか

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